愛の奉仕活動紹介

愛の奉仕活動紹介: Vol.28 東京カリタスの家–家族福祉相談室・ボランティア開発養成室

2025年04月21日

「東京カリタスの家–家族福祉相談室・ボランティア開発養成室」
訪問レポート

今回は、文京区関口の東京カテドラルのカトリックセンター1階に拠点を置く公益財団法人東京カリタスの家のボランティア活動部門である「家族福祉相談室」と「ボランティア開発養成室」を訪問させていただきました。東京カリタスの家は1969年に白柳大司教(後に枢機卿)を中心に4名のボランティアによって発足され、現在に至るまでに、ボランティアによる活動(家族福祉相談室・ボランティア開発養成室)に加えて、発達障害のある児童のための支援施設「子どもの家エラン」、主に発達に偏りや遅れのある就学児童のための放課後等デイサービスを提供する「カリタス翼」、そして創作やグループ活動を通して障がいのある方々の自立を支援する地域活動支援センター「みんなの部屋」の3事業を立ち上げて運営してきた公益財団法人です。現在の理事長は菊地枢機卿で、東京教区ニュースのコラム「カリタスの家だより」でご存じの方も多いと思います。訪問当日は「家族福祉相談室」のボランティアスタッフの小林さん、「ボランティア開発養成室」のボランティアスタッフの酒井さんにお話を伺いました。はじめに、「家族福祉相談室」について小林さんから伺います。

東京カテドラル関口教会の構内です。

 

家庭福祉相談室とボランティア開発養成室は東京カテドラルのカトリックセンター1階にあります。

 

インタビューにお答えいただく小林さんです。

家族福祉相談室が始められた経緯と変化について教えてください。

1964年から家族を対象とした様々な相談を受けていて、そのなかから1970年には「子供クリニック」(後の子供相談室・原カリタス翼)が作られ、1972年にはその相談活動が家族相談室と名付けられました。東京カリタスの家の当初から続けられていた活動で、当初からカトリックセンターの1階、電話で利用者からの相談を受けていました。当時は午前2人、午後2人の4名体制で相談を受けていました。私が入った1990年代には現在と同じ様なシステムで活動して、三好神父様がカトリックセンターの住まわれていて私たちと一緒に活動していただいていました。三好神父様が亡くなられた後は、小宇佐神父様が常務理事に付かれ、活動を勇気づけていただきました。当時は年間200件以上の相談があり、支援内容も障害者の家事支援等、今ではヘルバーの方がやるような支援もしていました。また、生活保護の受給への支援もよくやっていました。ボランティアの合宿の企画をして東京カリタスの家全体で出かけるなどもしていました。

活動としてどの様なものがあるのですか。

まずは、電話受付の活動があります。障害を抱えて苦しんでいる方、家族関係で問題を抱えている方、孤独の中におられる方から様々な相談を電話で受け付けています。現在は月曜日から土曜日の午前10時から午後2時まで、毎日2名のボランティアが受付の活動を担当しています。受付2人のうち1名はその曜日の責任者で、ベテランの方が入ります。

次に利用者への支援活動があります。相談者を支援することが決まった段階でその方をケアするコーディネーター(責任者)と担当者がきめられ、事前に利用者と決めた支援活動、例えば月一回の傾聴、通院支援等が始まります。

これらの活動を支えるために、医師や福祉の専門家の方の勉強会を毎月行っています。

スーパーバイザーの五味淵先生(医師)を囲んで勉強会を月1回開いています。

具体的に相談受付からの流れを教えていただけますか。

相談の受付は基本的には電話が最初の窓口となります。今はメールでファーストコンタクトが入る場合もあります。この相談受付を月曜日から土曜日まで午前10時から午後2時まで行なっています。そして、電話受付では詳しい相談内容は聞かず、相談者とその電話で具体的な相談内容を聞く面談の日程を設定し、受付責任者が後日お会いしてお話を聴きます。私たちは相談者と会わなければ解らないことが沢山あると考えていて、相談者と一度お会いするというプロセスを大切にしています。そして、責任者が集まる会議でその相談者の支援を始めるか否かをみんなで話し合って決定し、支援が決まった場合その担当責任者と担当者を決めます。そして、傾聴や障害者施設の通所同行などの支援が始まります。

ある日の電話受付室の風景です。

どのような相談があるのですか。

かつては障害者から家事支援、生活保護の申請の同行、立ち退きを迫られている生活保護受給者の家の手配等様々な相談がありました。今では、介護保険や公的なサービスが整ってきているので家事支援というような相談はなくなってきています。最近は、生活問題というよりは、家庭内の人間関係のもつれや障害者や高齢者の孤独や不安からの電話相談が多くなってきています。また、この法人の設立経緯も関係しているのでしょうけれども、信者の方から信者間での関係について悩んでいる等の相談もあります。

ひまわりについて教えてください。

ひまわりは家族福祉相談室の利用者の内、希望する方が週一回集まって、昼食をみんなで作って食べて交流をする活動です。場所は、カトリックセンターの地下1階のみんなの部屋の場所の一部をみんなの部屋が休みの木曜日に借りて行なっています。相談室の利用者の中には障害を抱えながら一人で生活している男性の方もいて、それらの方が週一回手作りの食事を摂ることができるということで喜ばれています。ボランティアの方も多く参加していて、利用者の方に直接お会いして、アットホームな雰囲気のなかで、利用者の方と話をすることでボランティアの方にとっても大切な経験の場となっています。私も家族相談室のボランティアになってすぐに利用者の方の支援を行って苦労した経験があるので、ボランティアが最初に経験を積む場として役立っていると思います。  

ひまわりは、現在、第一、第三、第四木曜日の月3回開催していて、毎回利用者とボランティアが半々くらい、15名ほどの方が参加しています。特に第4週は生活保護の受給直前になるので外せない週となっています。メニューは責任者が利用者の方の意見も聞きながら決めています。また、年に2回ひまわりの仲間たちで新宿御苑にお花見を兼ねて遠足に出かけます。

ひまわりではボランティアと利用者の方が共に食事を作り、食卓を囲んで共にひと時を過ごします。

 

ひまわりの皆んなで新宿御苑にお花見に行きました。

コロナ禍で相当影響を受けたと思いますが、その経験から何か変化したことはありますか。

コロナ禍で電話受付が中止になってから、相談件数がなかなか増えていかない状況にあります。社会的には高齢化や社会的な分断が言われ、孤独感を持つ方は増えていると思いますが、そこにうまく繋がっていっていない様に感じています。中断した活動が再稼働して軌道にのるには、もう少し時間がかかるのではないかと思います。

 

現在直面している課題はなにかありますか。

ネットやSNSの利用など時代に即した相談や支援の方法はあると思いますが、心に寄り添う対応は常に必要であると考えていて、時代に合わせた方向性をどのように見出していくのかが課題だと思います。

責任者の高齢が進んできていて、世代交代の時期に来ているが、なかなか責任者を引き受けてくれる若い適任者が少ないのが悩みです。

また、教会とのつながりを再構築する活動をしたいと思いますが、なかなか人がいないのが現状です。

利用者の方との関係で一番困ることはどういうところですか。

思い病気の方を担当していた時、夕方になると気持ちが落ち込んで電話をしてくるかがいました。その方から色々言われてもどうすることもできず、ただ話を聞くだけで無力感を感じた経験もあります。利用者の人生はその方のものであり、さまざまな困難を抱えながら生きていかなければなりません。本当に大変だろと思いますが、自分には大それたことはできません。その様な時は、「私がそばにいるだけでいいのではないか」と思うようにしています。また、自分が担当していた方がアパートで孤独死してしまった時には心が残ってしまします。

この活動に関わっていてよかったと思う瞬間はどのようなときですか。

気になっていた人が明るくなり自分の道を見定めて前に進んでくれているのを見た時に後で少し後戻りすることがあっても良かったと思います。生きていくことは大変だし自分自身も色々抱えていて、でも一緒に歩けていると感じることができたときに本当に良かったと思えます。最近、ここで支援をしていた方が自立して就職までできた時には本当に嬉しかったです。

 

次に、ボランティア開発養成室の酒井さんに話を伺います。

インタビューにお答えいただく酒井さんです。

東京カリタスの家の事業としてボランティア開発養成室が始められた経緯について教えてください。

東京カリタスの家では1969年の設立の翌年の10月には相談者を支援するボランティアの開拓を行うために第1回のボランティア養成講座が始められました。それ以来、家族福祉相談室の中にボランティアの養成を担当するボランティアビューローを置いてボランティア養成講座等の活動を行なっていました。その後、組織的には幾つかの変遷はありましたが、家族福祉の中でボランティア関連の活動を支援する責任者となって運営してきました。そして、2015年に利用者の直接的にケアをする家族福祉相談室の負担を軽減し相談者に集中してもらう目的で、ボランティア養成講座等ボランティアに関する事項の仕事を行う部署としてボランティア開発養成室が設置されました。当初は、私一人だけだったのでとりあえず養成講座を引き継いで行い、二年目からは交流学習会、教会キャラバン、郵便発送等の仕事を引き継いで行う様になりました。新規登録ボランティアのための研修会もやっていました。

現在、どのような活動をしているのですか。

まず、ボランティア養成講座を年に5回開催しています。この講座の最初にいつも伝えるのですが、東京カリタスの家ではここで得た知識を使って上から目線で相談者の方に接するのではなく、ここで得た知識は自分を耕すために使ってもらいたいと考えています。いずれにせよ、勉強することで自分の幅を広げることができるので、勉強はボランティアをするには絶対に必要なことです。この講座には毎回30名から40名の方が参加されます。

次に、ボランティア交流学習会は登録されているボランティアの方を対象に行うもので、ボランティアの方の視野を少し広げるための講座とボランティア同士が話し合える様なプログラムを年に2回行っています。

コロナ前には教会キャラバンといって、各教会で小宇佐神父様がミサの司式をしてその後に東京カリタスの家について説明をする機会をいただくという活動を行なっていました。コロナ禍で中止となり現在に至っています。

日常的な活動としては、新たにボランティアになられる方のオリエンテーションをその都度担当しています。

ボランティア開発養成室の打ち合わせ風景です。

ボランティア養成講座ではどの様なテーマが設定されているのでしょうか。

かつて、小宇佐神父様が中心となってテーマを決めていた時は、例えば「隣人になる」といったような聖書からのテーマをとることが多かったと思います。今は、毎年立ち上げられるボランテイア養成講座実行委員会の中でボランティアが話し合ってテーマを決めていきます。今年度は「高齢社会にボランティアは何ができるか」と設定しています。このテーマに合わせた講師を選んで依頼していくことになります。今回は5月から始まり、第一回目にアンドレア司教様に講話をしていただき、第二回目以降にお医者や社会福祉の専門家の講師を予定しています。詳しい内容は東京教区ニュースとホームページに掲載させていただきます。また、各教会にはチラシを置かせていただきます。

2025年ボランティア養成講座の内容です。

どの様な方が受講されますか。

受講される方は必ずしも信者とは限らず、女性が多いですが男性も来られます。50代から70代の方が中心ですが、80代もおられます。

最近のボランティアの傾向について教えてください。

かつての様な時間の融通がきく専業主婦が減り、圧倒的に職業を持たれている50代の方が多いのです。働いておられる方は、どうしても活動が土曜日、日曜日に制限されてしまうことになります。これらの方には、土曜日、日曜日にできるボランティアを紹介しています。一方、働いている女性の場合フルタイムで働いている人は意外と少なく、色々話を聞いていくうちに平日でも一定の時間はボランティアとしいて動けることがよくありますので、この希望者を開拓する必要があるかなと思っています。

コロナ禍で相当影響を受けたと思いますが、その経験から何か変化したことはありますか。

コロナ禍の時はボランティア開発養成室の活動が全面的にストップしてしまいました。その間、登録されているボランティアの方との関係を保つために、私共責任者がボランティアの方にお手紙を出させていただきました。この間、人と人の繋がりを大切にしているカリタスの考え方が本当に大事なのだと改めて感じました。

現在直面している課題はなにかありますか。

他の部門も同じだと思いますが、責任者を担ってもらえる後継者が不足しているのが問題です。

この事業に関わっていてよかったと思う瞬間はどのようなときですか。

全く縁のなかった方とこの活動を通じて知り合うことができた時に、広く人と関わるこの活動をやって良かったと思います。特に、人のために行動しようとするから講座に来るので、そのベースにある人たちと関わり合って一緒に活動できるかもしれないと思えることは幸せなことだと思っています。このようなことは小教区に閉じこもっていたのでは味わえないと感じています。