愛の奉仕活動紹介
愛の奉仕活動紹介: Vol.8 四ツ谷おにぎり仲間
2024年03月21日
「四ツ谷おにぎり仲間」訪問レポート
今回は東京都千代田区にある麹町教会で行われている「四ツ谷おにぎり仲間」の活動現場を訪問しました。麹町教会は聖イグナチオ教会という名でも呼ばれて、JRと東京メトロの四谷駅の目の前という東京教区の中でも最も交通の便のよい場所にある教会の一つです。麹町教会は様々な国の人々が集う教会で、主日には日本語以外に英語、スペイン語、ベトナム語等様々な言語のミサが捧げられています。
麹町教会の全景です。
「四ツ谷おにぎり仲間」は毎週土曜日に麹町教会の厨房で作ったおにぎりと「おにぎり通信」、ご寄付頂いたホッカイロ等の生活用品を携えて、都心部である、千代田区、中央区の5つのコースに分かれて廻り、野宿をしている方々等を訪問しておにぎり等を手渡しながらその方のご様子を見たり、お話をする活動をしています。また、その中で、必要に応じて福祉事務所等への同行する活動もしています。このグループの活動は2000年4月に麹町教会の信徒の有志が、教会周辺の野宿をしている人々に何かできないかということで、自宅で作ったおにぎりを持って訪問をすることから始まりました。教会の厨房を利用することが認められ、おにぎり作製をご奉仕する人が増え、また訪問するコースも徐々に増えて現在では5コースとなっています。
2月の土曜日の活動日のお昼過ぎに伺わせていただきました。厨房のあるテレジアホールでは土曜学校が開かれていて、小学生がリーダーと一緒に楽しそうに活動をしています。厨房では一釜目の炊きあがりを待っているところでした。今日は合計12Kgのお米を2回に分けて炊き、おにぎりを80個作る予定です。ご飯が炊き上がると保冷剤に上に乗せられたバットに入れられ、通常は梅干しのおにぎりですが、この日は、ご寄付頂いた塩昆布を混ぜられた後、別のバットに移されて丁寧にかき混ぜながら冷まされます。
炊き立てのご飯を保冷材の上で素早くさましていきます。
ご飯がある程度冷めると、250gの分量で分けられていき、梅干しを乗せ、握りの作業に入ります。ふっくらと握られたおにぎりは海苔が巻かれ、サランラップで包まれて完成します。2釜目が炊き上がると同じ要領でおにぎりが作られていき、訪問班に渡すように5個ずつ包装されて一時保管されます。おにぎりの作製が終わると厨房の後片付けと掃除が行われ、作製班の活動は終了します。
250gずつ計量しています。
おにぎりは手際よく握られ一つずつラップで包装されて完成します。
訪問班の為にレジ袋に詰められて保管されます。
調理後は床掃除までして作製班は終了します。
本日の作成班のスタッフの方々です。
次は、訪問班の登場となります。教会周辺を担当する方がまず、付近の公園に住んでいる野宿者の方におにぎり等を持って訪問します。いつもの担当者と違うため、受けとってもらえるか心配していましたが、無事受け取ってもらい、話も出来てホッとしました。
公園にいる野宿者の方へ声掛けをします。
5時半を過ぎると、次々に訪問班の人たちが教会に集まり始めます。本日のボランティアの方は合計で14名、幅広い年齢層の男女の方で構成され、この日はイエズス会の神学生2名も参加していました。上智大学や他大学の学生が参加することもあるとのことでした。
6時になると、パトロールリーダーから班分けが発表になります。教会周辺のA班を除くB班からE2班に分けられます。コースを紹介すると、B班:有楽町・銀座・京橋・八重洲、C班:日比谷公園・国際フォーラム・丸の内、D班:亀島橋・茅場町、E1班:秋葉原・神田・常磐橋、E2班:九段下・竹橋・鎌倉橋の5コースとなります。いずれも大都会の真ん中であることがわかります。
訪問班が本日お渡しするおにぎり、おにぎり通信、ホッカイロです。
訪問班出発前のミーティングの様子です。
私たちはC班に入り、日比谷公園方面を担当することになりました。各班のリーダーは回る経路をよく知っているベテランの方が指名されているようです。ミーティングの中で、気になる野宿の方の安否の情報について、共有がなされます。ミーティングが終わると班毎に最寄りの駅まで地下鉄等で移動します。C班は四ツ谷駅から丸の内線に乗って霞ヶ関に向かいます。
6時頃に教会を出発し地下鉄等で各コースの訪問先に向かいます。
霞ヶ関で降りると、日比谷公園に入り、イベントで盛り上がっている大音楽堂の脇を通り、日比谷公会堂へと向かいます。日比谷公会堂の前には15人くらいの方の列ができていて、おにぎりと「おにぎり通信」とホッカイロを手渡しながら、何人かの方と話をします。
利用者の方に手渡しを始めたところです。
日比谷公会堂の前から松本楼の横を通って進んでいくと、ところどころのベンチに野宿者の方が佇んでいて、近づいて声掛けをしておにぎりを渡していきます。日比谷公園を出ると、祝田通りを進み野宿者の方に声掛けをしていきます。
公園内を野宿者の方を探しながら進みます。
野宿者の方に声掛けをしておにぎり等をお渡しします。
道端の野宿者の方に声掛けをしています。
次の目的地国際フォーラムに向かいます。イルミネーションが輝く有楽町から丸の内へ抜けるビジネス街の通りを進んで国際フォーラムに到着します。国際フォーラムの中庭のベンチでは、点々と野宿者の方が待っていました。声掛けをしながらおにぎりを渡していきますが、この場所がフォトスポットらしく、すぐ横では外国人観光客が男女で自撮りしているのが印象的でした。
東京国際フォーラムの状況です。
次は、東京駅の八重洲口から丸の内口を目指します。途中、地下道出口で待っている方に声掛けをして東京駅にはいります。地下連絡通路を通り、丸の内側の集合場所に到着しました。他のルートの班の方も、この丸の内口地下道へ集合します。
全部の班が集合したところで、訪問の状況について報告がなされた後解散となりました。
代表の高橋さんにお話を伺いました。
「色々な班に分かれて活動をしているとのことですが。」
私たちのグループでは、おにぎりを作る「作製班」、おにぎりと「おにぎり通信」を持って野宿者の方達等を訪問する「訪問班」、希望される方と福祉事務所や医療機関に同行する「福祉班」、『おにぎり通信』を執筆編集し、HPや公式ブログを管理している「編集班」、毎月第一主日にお米等の寄付の受付を行う「献米班」があります。「作製班」でおにぎりをにぎることから始めて、「訪問班」に参加していく方もいます。おにぎりよりも季節の話題や週間天気予報を載せた「おにぎり通信」を楽しみにしている方もいるほどです。また、訪問班から他の班に訪問時の状況がフィードバックされ励みになっているようです。
編集班によって作成された当日のおにぎり通信です。
毎月第一日曜日のミサに合わせて行われている献米活動です。
「ボランティアについてはいかがでしょうか。」
ボランティアの方が集まりやすい環境にあるのは確かです。2000年に始まった当初は、なかなか理解が得られませんでした。社会現象にともない、例えばリーマンショックは主として男性の正規・非正規労働者が、また、コロナではアパレル関係等で女性がそれぞれ職を失い、誰でもその立場に立ちうるという理解が広がるなかで、教会で開かれた大人食堂を通じて自分たちでも何かできないかと考える信徒の方々が増えたと思います。
「訪問される当事者の方々の変化に付いてはいかがでしょうか。」
若い人は一時的な収入でネットカフェとかに入れるのですが、その方々も路上生活一歩手前で、貧困者が減っているわけではありません。純然たるいわゆる路上生活は減っていると思います。しかし、有楽町、日比谷公園、幹線道路の道端などに路上生活者の人々が住んでいるのは事実で、新しく参加された方は「野宿者がいることを普段は見過ごしている」とよくおっしゃいます。コロナで緊急事態宣言が出た時も活動を継続しましたが、支援を必要とする方が増加し、作製したおにぎりが足りず、通常はコンビニで購入するのですが、コンビニにおにぎりがなくてその時は、マックのハンバーガーをお渡ししました。施設の個室化のために入居定員数が減少し、近県の施設に行かざるを得なくなる等、さまざまな事情で野宿を継続し、中には、体を壊して緊急搬送される方もいらっしゃいます。
「今後の活動についてどのようにお考えでしょうか。」
今後の活動としては、当事者の方が減っているので、一人ひとりにもう少し関わることを大切にしたいです。現在、その方法について、模索をしているところです。
いすれにしても、当事者の方がおられるのであれば、この活動を続けていこうと思っています。