愛の奉仕活動紹介

愛の奉仕活動紹介: Vol.11 多摩川支援の会「TAMAちゃん」

2024年04月23日

多摩川支援の会「TAMAちゃん」訪問レポート

今回は東京都大田区にあるカトリック田園調布教会で行われている多摩川支援の会「TAMAちゃん」の活動現場を訪問しました。カトリック田園調布教会は聖フランシスコ教会としても知られ、東急東横・目黒線田園調布から歩いて10分、同多摩川線多摩川駅から歩いて8分ほどのところの閑静な住宅街の一画にあります。カトリック田園調布教会は1931年にカナダ・フランシスコ会の宣教師によって創立されて地域の宣教活動の拠点となり、戦中の困難な時期を乗り越えて、戦後の日本の復興と共にさらに発展してきました。東京教区内でも3番目に信者数が多い教会となっています。現在の聖堂は1955年に建てられたもので、敷地内にはフランシスコ会の修道院があります。

カトリック田園調布教会の聖堂外観と内部です。

 

多摩川支援の会「TAMAちゃん」は毎月第二金曜日にスタッフの方々が作ったお惣菜でお弁当を作り、それにお菓子やカセットボンベ等の日用品を付けて、近くの多摩川の丸子橋から上流の東京側と川崎側の河川敷に住んでいる人々にお届けに行くという活動を行っています。また、同時にお弁当とお菓子を横浜教区のカトリック中原教会・カトリック溝の口教会の『野宿者の見守り支援「中原パトロール」』というアウトリーチチームに提供をしています。

3月の第二金曜日の活動に伺わせていただきました。東京でも雪が積もるという予報が出ていましたが、当日は雪が夜半にやみ、雪は解けたものの寒い1日となりました。聖堂下の厨房に併設されている食堂でお弁当作り等の作業が行われます。お弁当調理スタッフの方々が次々集まってきて、まず、ご飯を炊くことから調理が開始されます。今日作るお弁当の数は21食分でお米3.2Kgを炊飯します。

お弁当に入れるお惣菜は栄養バランスを考えたメニューに従って、スタッフが手分けをして調理したものが持ち寄られます。この日のメニューは、焼き鮭、筑前煮、ほうれん草の胡麻和え、ひじきの煮物、さつま芋の甘煮、玉子焼き、うぐいす豆の煮豆、漬物の8種類のおかずとご飯250gとなります。高齢者が多いことから、おかずは柔らかく噛みやすいもの、また高血圧の方や糖尿病の方も多いことから、塩分や糖分等にも注意をしているとのことでした。

本日のお弁当に添えられる手作りのおかずです。

 

炊飯をしている間にお弁当を入れる容器の準備をします。同時に、お弁当に添えるメッセージカードが一つ一つスタッフの手書きで用意されます。

食べる方へのメッセージカードが一枚一枚手書きで作られます。

 

お弁当の容器は、利用者の方が河川敷におられることを考慮して、竹繊維で作られた環境対応のものを使用しています。容器にはご飯が容器にこびり付かない様に予め紙が敷かれています。おかずがお弁当詰めのためにテーブルに用意されてお弁当を詰める準備が整いました。ご飯が炊きあがると、扇風機でさましてから、250gを計量して容器に詰めていきます。

お弁当の容器は環境対応のものを使用しています。

 

その後、おかずを入れていきますが、おかずの数が多いので入れる位置決めにテクニックを要します。全部入れ終わると、ネームカードとメッセージカードを張り付けてお箸を付け袋に入れて完成します。

おかずがぎっしり詰まった特製のお弁当の完成です。

 

TAMAちゃん弁当のラベルとメッセージカードが添えられます。

 

お弁当の用意と並行して、お弁当と一緒に渡すお菓子や果物、飲み物、ホカロン等の日用品を一人分ずつ袋詰めします。

本日手渡すものです。

 

配布物の準備が出来た段階で、おにぎりでミーティングとなります。

本日の調理チームの、メンバーです。

 

午後1時30分になると中原教会の方が「中原パトロール」で配布するお弁当とお菓子他を取りに来ます。この日は中原側分として10人分が渡されました。

中原パトロールの方にお弁当とお菓子を託します。

 

午後2時頃から、アウトリーチのチームの方が集まり始めます。この日のアウトリーチの訪問予定は東京側が5名、川崎側が6名の11名となります。今日のアウトリーチのスタッフは5名で、川崎側に3名、東京側に2名で私は東京側に加わります。

本日のアウトリーチチームの方々です。

 

車に支援物資を積み込み、最初の訪問先である多摩堤の駐車場に車を入れて、3人分のお弁当やお菓子・飲み物等を持って、河川敷に向かいます。

早咲きの桜咲く河原を歩いて訪問先に向かいます。

 

廃材やビニールシートで居住スペースを作っている3軒に声をかけていきます。出てこられない方の場合、隣に居る方にお弁当と支援物資を預けておきます。おられる方とは近況や体調など10分ほどお話をしていきます。野宿者の方との信頼関係がよく表れていると感じました。

一人一人声をかけて、話を聞きながらお弁当を手渡しします。

 

ここの住人は、飼い主に河原で捨てられ、人間にいじめられていた猫達を保護して世話をしていている優しい人たちです。この猫と野宿者の交流は、映画「たまねこ、たまびと」(棄てたのは人間 守るのも人間)で取り上げられました。

飼い主に捨てられ、河川敷の住人に保護されて救われた猫です。

 

次に、車で下流の多摩川駅に向かいます。車を多摩川駅前の駐車場に入れて、橋桁下まで荷物を持って歩いていきます。そこには2人の方が居ます。橋桁の下では、囲いを作ることができず、上からの雨はしのげるものの、横から吹き込む雨にはさらされる生活を余儀なくされます。それらの方々にお弁当と支援物資を渡しながら、生活や体調について話をします。「体を洗うのに水しか利用できないので、手関節や唇の「あかぎれ」がすごく、もらったワセリンは使っているが、暖かくなるのを待つしかない。」とか「野宿生活になってから熟睡したことがない。」といった厳しい生活に付いて淡々と語ってくれました。

お一人には本人の希望で一か月分の「聖書と典礼」が届けられます。

訪問が終了すると教会に戻り、川崎側のチームと情報交換を行ってその日の活動は終了します。

後日、4月の第2金曜日に川崎側のアウトリーチに参加しました。午前中は雨が降っていましたが、お昼には雨も止み青空もみえる天気の中、車で川崎側の河川敷近くの駐車場に車を止めて、イースターエッグ付きお弁当、お菓子、飲み物、カセットボンベ等を6人分持って河川敷に向かいます。

雨上がりでぬかるみが予想されるため長靴に履き替え、現地に向かいます。

 

今日は、飼っている猫の餌も持っていきます。まだ、桜が綺麗に咲いている河川敷を歩いてブルーシート等で作られた住居に一軒ずつ声かけをして、体調のことや、必要としている物資などを聞きます。「花見の人が夜遅くまで騒いでゴミを散らかしていく」、「風が強い日があり風向きによって家が飛ばされそうになる」、「腰が痛くてアルミ缶集めができない」等々日常生活の話題を話していきます。人によっては、お弁当を受け取って直ぐに引っ込んでしまう人もいますが、できるだけ話かけるようにしているとのことです。

この猫達の為に今日はキャットフードを用意しました。

 

河川敷に点々と存在する6軒を訪問し終わると教会に戻って東京側のチームと情報交換をして解散となります。

 

福祉委員会の代表の関戸さんやスタッフ皆様にお話をお伺いしました。

教会の福祉委員会としてこの活動を始める経緯について教えてください。

2019年10月に関東を襲った台風19号で、河川敷にいたホームレスの方が増水した河川に流されて死亡するという痛ましいことが起こりました。このことをきっかけに、以前から生活困窮者に関心を持っていた信徒の方が、自分たちで教会付近の河川敷のホームレスの状況をアウトリーチしながら調査を初めて、当初は8名のホームレスの方繋がりを持ち、月2回、ゆで卵やロールパンなどの食糧のお届けを開始しました。

そして、2022年の初めに支援していた方が孤独死されるという痛ましい現実がありました。また、教会付近の河川敷には炊き出しに並ぶのが難しい病人や高齢者がいるけれど、他の支援が薄い地域であるという現状がありました。アウトリーチを行っていた信徒の方から、少しでも栄養価の高いお弁当を定期的に届ける等手厚い支援をしたいのだけれども、福祉委員会として一緒にできないですかという相談がなされました。福祉委員会の代表者もこの信徒の方々の活動には関心を持っていて情報交換はしており、相談を受けてから活動を始める方向で主任司祭に話を持って行ったところ、社会に向けた活動として快く受け入れていただきました。スタッフ集めを開始したところ十数名の方が手を挙げてくれ、その中に他の活動団体で経験をしていた方や海外でボランティアの経験がある方など様々なかたがいました。こうして、2022年10月から福祉委員会の活動の一つとして月一回お弁当を作ってお届けするという活動が始まり、現在は、お弁当作りやお菓子や支援物資の準備をするグループとアウトリーチに出かけるグループが連携して活動をしています。

スタッフの方々はこの活動をどのように考えているのでしょうか。

信徒の方々も河川敷を散歩するときに、野宿者が河川敷で生活しているのは知っていて、気にはしていました。教会として何か出来ないか考えていた時に、支援活動の話が出たので手を挙げました。そして、同じ様に考えている方がいて、様々な方がスタッフとして手を挙げたのではないでしょうか。教会の内向きの活動は盛に行われますが、社会に向けた支援、まして教会の直ぐ近くで困難にある方を支援することも重要な活動であると思います。