カリタス東京ニュース

カリタス東京ニュース2024年10月号

2024年09月24日

インフォーメーション

11月16日(土) 「生活困窮者支援フェスタ」を開催します

  • 時間:11:00 ~ 17:00 
  • 場所:関口会館・ケルンホール・カテドラル地下聖堂
プログラム
炊き出し調理体験 11:00~12:30
  • 場所:関口会館調理室(1階、地下)
  • 炊き出しの調理に挑戦してみませんか?おにぎり、豚汁、カレーなどを予定しています。経験は問いません、何方でも参加できます、一緒に調理しましょう。 先着40名
  • <昼食は、炊き出し調理で作ったものを一緒に食べましょう。>
活動紹介・物品頒布 11:00~13:30
  • 場所:ケルンホール
  • 東京教区内の生活困窮者支援団体・グループ出展コーナーです。
講演会 14:00~15:30
  • 場所:ケルンホール
  • 講師:吉水岳彦(よしみず がくげん)さん(浄土宗光照院 住職)
  • テーマ:「路上のいのちに向き合う 宗教を超えて」
貧しい人のための世界祈願日ミサ 
16:00~17:00
  • 場所:カテドラル地下聖堂
  • 主司式:小池亮太神父 (カリタス東京常任委員長)

 

*参加申込:
こちらの申込みフォームよりお申込ください

 

愛の奉仕活動の紹介コーナー

「聖家族寮・聖家族寮ミカエラホーム」訪問レポート

今回は東京都にある社会福祉法人礼拝会が運営する聖家族寮と聖家族寮ミカエラホームを訪問しました。社会福祉法人礼拝会の母体は1856年に礼拝と売春により疎外されている女性の解放を目的としてマリア・ミカエラによってスペインで設立された「聖体と愛徳のはしため礼拝修道女会」(礼拝会)です。聖家族寮は社会福祉法の無料低額宿泊所として施設の2階部分に設置され定員は12名です。一方、聖家族寮ミカエラホームは児童福祉法の自立援助ホームで聖家族寮に近接した戸建ての建物に設置されて定員は6名の施設です。

当日は、聖家族寮施設長の中田さん、聖家族寮ミカエラホーム施設長の寺田さんに各施設を見学させていただき、その後インタビューにお答えいただきました。

聖家族寮施設長の中田さん(左側)と聖家族寮ミカエラホーム施設長の寺田さん(右側)

 

日本における礼拝会による女性を対象とした福祉の歴史は戦前にさかのぼるとのことですが。

礼拝会の日本での活動は、1928年5月にスペインから3人の修道女が愛媛県松山市に上陸して始まりました。東京で本来のミッションに献身するため活動すべく3人のシスターが上京し、1932年に麹町に修道院を開設し、その翌年の1933年に同じ場所にカトリック信仰志願の貧困や地方出身の都会で苦しんでいる女子の集まれる場所として女子更生施設「白菊寮」を開設したことが記録されています。戦時中、東京大空襲で麹町一帯が焼失してしまい、終戦直後1946年には横浜の修道院に聖家族寮と白菊寮を開設して売春や要保護の子女を保護救済する活動を再開しました。そして、東京では1961年5月に聖家族寮が開設され、開設当初は地方からの学生・社会人も居住していました。次第に社会福祉事業が活動され、1985年4月に聖家族寮に居住していた女子4名とシスター1名が戸建てに引っ越す形で聖家族寮ミカエラホームが開設されました。

聖家族寮の現在の3階建の施設はどの様に利用されているのですか。

現在のこの建物は2014年に建替えられたものです。一階は共有スペースで事務室、食堂、厨房、集会室などがあります。2階は聖家族寮の無料低額宿泊所の居室が12室あります。3階は12室の女性専用の賃貸住宅となっています。

1階にある厨房です。賄と自炊の両方で使われています。

 

聖家族寮1階の食堂です。

 

階段、廊下が広く設計されているのが特徴です。

 

聖家族寮の居室となります。広い窓とベランダ付の明るい居室です。

 

聖家族寮の居室の収納です。

 

聖家族寮の談話室です。

 

聖家族ミカエラ寮は戸建て住宅のようですが。

この建物の1階にはダイニングキッチン、宿直室を含む共有設備、2階に居室があります。

聖家族寮ミカエラホームの玄関になります。

 

聖家族寮ミカエラホームの談話室です。

 

聖家族寮ミカエラホームのダイニングです。

 

聖家族寮ミカエラホームの居室です。空室になっているところを撮影させていただきました。

 

職員の方の引き継ぎにお邪魔しました。

 

聖家族寮ミカエラホームは自立援助ホームという位置づけですが、どのような役割を担っているのですか。

自立援助ホームとは児童福祉法で定められた施設で、何らかの理由で家庭に居られなくなり働かざるを得なくなった15歳以上から20歳(状況により22歳)くらいまでの子供が生活するところです。児童養護施設では入所者が中学卒業後、高校に行かないと退所する必要がありますので、ここに来て働きながら住むことになります。児童養護施設から以外では、15歳以上で虐待のカミングアウト、家出等の理由で家庭に居られなくなった子供もここに来ます。ここに入所後、仕事をしてお金を貯めて自立していくのを支援することになっています。働く意欲のある子供が、この施設に籍を置きながら、アパートで一人暮らしを体験してみるというプログラムもあります。この施設の利用期限は何年とは決まっていませんが、自立を目的としているので1年くらいで巣立っていければということになっています。この施設の職員は常勤が3名、非常勤が5名となっていて、宿直者1名体制を取っています。

聖家族寮ミカエラホームの入居者の状況はいかがですか。

児童養護施設から入所してくる子供の場合、高校に入学したけれども何らかの原因で通学が出来なくなり1年生若しくは2年生で高校を退学して入所してくるケースが多いと思います。また、虐待や家出等の理由で児童相談所から入所する子供も多くみられます。入所者は大体1年から1年半くらいで退所するケースが多くなっています。就職し貯 金をして経済的にも自立することが前提となっており、この流れに乗れる子供ももちろんいますいます。しかし、思春期の15~16歳で仕事を続けることの難しさから、退所を希望して、家出を原因で入ってきた子供が家に帰る、また、虐待を受け障がいがある子供が生活保護を受けてアパートや他のグループホームに入ることもあります。子供によっては、ここにとりあえず入所するが働かず、所内の規則も守れず、最後逃げ出してしまうケースもあります。一方では、働く意欲がある子供が一人暮らし体験プログラムに挑戦している例もあります。

友達が18歳から大学、専門学校、就職で自立していくと自分も施設の管理された生活から自立したいと思うようになります。家族のある子供は一般的に高校を卒業して大学に進学すると学費との問題が発生しますが、施設にいる子供は生活費も同時に稼がなければならなくなります。子供たちのその生活への不安が早く引っ越して自立を目指す原因なるとも考えられます。

この施設は年齢的にも最後の施設といわれ、虐待や複雑な家庭環境で苦しんできた子供が、反抗期・思春期の真只中で入所してきます。子供たちはみんな今の状況を何とかしたいと思って必至です。しかし、自分で何とかしたいと思ってもできずにもがいています。困難な環境で生活してきた子供が、安心できる環境で、自分を見つめて、将来20歳代半ばになった時に自分らしい生活を送れるために、生きる道を選択できるようにお手伝いできればと思っています。

聖家族寮は無料低額宿泊所という位置づけですが、どのような役割を担っているのではか。

無料低額宿泊所というのは社会福祉法で「生活困窮者のために、無料または低額な料金で簡易住宅を貸し付け、又は宿泊所その他施設を利用させる事業」と定義されていて、聖家族寮はこれらの女性に対して部屋の利用や食事等のサービスを提供しています。この施設には生活困窮者を支援しているNPO法人等から行政の福祉事務所を経由して依頼されてくるケースがほとんどです。生活保護を受けた人が一旦このような施設に入居して、自立できるようになってアパートに転居するようになっています。ここは、更生施設とは違い、生活指導等がほとんど必要ない人を対象としています。生活困窮者が将来的に自立していくことが前提となっているので、原則として1年間の利用ということになっています。

聖家族寮の入居者の状況はいかがですか。

最近では、95%の利用者が社会福祉事務所経由で紹介され入居されています。時々、1年に1人位、様々な事情を抱える大学生等の女性が自費で利用することもあります。一般的には、生活保護を受給してここで生活し、半年から1年の間にアパートに自立していっています。一方で、期間が短い人では数週間で出られる方もおられる一方、何らかの事情があって他に転居することが難しくて、ここからこの建物の3階のアパートに移動する方もおられます。最近の特徴として、入居者が携帯電話を手放さずSNSで誰かと話をしていることがあります。入居者の人生の同伴者は携帯電話の向こうの誰かというということになるのでしょうか。

施設を運営していて現在直面している課題はなにかありますか。

利用者である子供が抱えている課題は障がいや虐待等多岐にわたっています。それら多様化した課題に対応するために職員の専門性が求められています。入所者は日常生活の中で仕事をしていますが、その生活の中で対応する職員に心理的な知識、あるいは発達障害に対する知識などがないと対応しきれなくなっています。

また、子供は施設で親子関係を再現することもあり、愛情獲得表現で子供が職員に当たると、職員の方の疲弊が問題となります。職員の方にモチベーションを保って活動できるようにするのが施設としての課題になっています。

さらに、自立援助事業の一環として、高校卒業して入所した子供に対して大学への進学をサポートするような基金をつくれればと思っています。

現在の社会福祉政策では施設内での処遇ではなく地域での自立を目標としています。 

この自立とは地域でサポートを受けながら生活できるということなので、障がい者の方が聖家族寮で受けた訪問看護を、他に引っ越しをしてもサポートが継続できるような仕組み作りが出来ればと思っています。

最後に、施設が築10年を経過して、建物のメンテナンスが必要となる部分があり、その資金を準備する必要性も感じています。

この施設で働いていてよかったと思う瞬間はどのようなときですか。

かつて施設から出てしまい、今はアパート住まいの子供が訪ねてきて、保育士の専門学校に行く保証人を頼まれたことがありました。ここに少しでも関わった子供が、どこに行っても家庭のかわりと感じてくれ、失敗しても戻ってくる場所があると思ってもらえばいいと思います。また、聖家族寮に入居している人はスマホを手放せない人が多いのですが、外から帰ってきたときに、おかえりなさいと声をかけたのに対して、イヤホンを外して「ただいま」言ってくれた時に嬉しさを感じる事があります。

 

カリタス東京活動報告

平和旬間の講演会と平和を願うミサが開催されました

講演会

上智大学名誉教授の根本敬先生による講演会のテーマは「創り直されるミャンマー クーデター下の弾圧と人々の抵抗、そして祈り」で約130名が参加しました。根本先生はミャンマーに暮らしたこともあり、長年の研究の中から、歴史的背景、国の体制、多民族社会などについて詳細に話してくださいました。その中で、ミャンマーの現状を「内戦状態」ではなく「革命的状況」であると説明され、「都市部や平野部の一般市民と、高原や山岳地帯を中心に動く少数民族政治諸組織がゆるい連帯を形成し、国民を抑圧する国軍(軍事政権)に対し、共同して戦っている」「クーデター政権を倒し、国軍をつくりかえ、公正な連邦制に基づく民主主義国家への作り替えを目指している新しいミャンマーの創造」と話されました。また、私たちにできることとしては、まず「祈ること」、そしてNGO団体などへの支援、ミャンマーに関する講演会やチャリティーコンサートなどへの参加を呼びかけられました。

 

平和を願うミサ

カリタス東京常任委員長小池亮太神父の主司式で行われ、約170人が参加しました。東京教区では、この平和旬間で特に姉妹教会であるミャンマーの教会を忘れることなく、平和を祈ることとしており、多くのミャンマー出身の方も参加しました。

この日、大聖堂のエントランスホールには、昨年同様東京教区ミャンマー委員会によってミャンマーの支援先の子どもたちの様子を紹介する写真展示コーナーも設けられました。ミサ献金は149,149円が集まり、ケルン教区と共同で推進しているミャンマーの避難民の子どもの教育プロジェクト「希望の種」の活動のために、ミャンマー委員会を通して活用されます。