愛の奉仕活動紹介
愛の奉仕活動紹介: Vol.20 NPO法人足立インターナショナルアカデミー
2024年11月21日
「NPO法人足立インターナショナルアカデミー」訪問レポート
今回は、足立区梅島にあるNPO法人足立インターナショナルアカデミーを訪問させていただきました。足立インターナショナルアカデミーのある足立区やその周辺には様々な国にルーツを持つ人々や子どもが数多く住んでいます。足立インターナショナルアカデミーはこうした子どもの教科学習と日本語学習、大人の日本語学習を支援しています。そして、この活動を通じて生徒とボランティアが共に成長するような「共育」を目指しています。
当日は同法人の理事長である安藤神父様と事務局の松村さんにお話を伺いました。夕方でしたので、インタビュー中にも利用者の子どもやボランティアの方が訪れてきます。
足立インターナショナルアカデミーの建物です。
インタビューにお答えになる安藤神父様です。
足立インターナショナルアカデミーが立ち上げられた経緯について教えてください。
私は30年間くらい足立区にアパートを借りて住んでいて、土曜日と日曜日に梅田教会のお手伝いをしていました。そこに、フィリピン人の信者さんが400人以上来るようになりました。その方たちは日本語がよくわからないということでしたので、梅島駅の近くで部屋を借りて、日本語を少し教え始めました。その後、フィリピン人の青年が勤めていた会社を辞めさせられた時に、日本語で書かれた退職に同意する旨の書面にサインさせられるということがありました。彼らは日本語がわからないために、社長が良い人であるという思いから、自分に不利になるとは解らずサインをしていました。このことを契機に、本格的に日本語を教える必要性を感じ、行動を始めました。
当時、私は上智大学で教えていて、学生に何かボランティアをする機会を作る必要性も感じていました。そこで、学校を運営している修道会に働きかけて、外国にルーツを持つ人々のために学生のボランティアが日本語を教える施設を作ろうと考えました。この考えに、イエズス会、幼きイエス会、聖心会、メルセス会が賛同してくださり、資金を提供してくださっています。
利用者が通いやすい場所ということで、家賃が必要でも施設の場所は足立区にこだわりました。家賃が安いところを探した結果、15年間で4回場所を変わりました。現在の場所は、3年半前に引っ越しましたが、駅にも近く、店舗を改装した建物で非常に使いやすいです。
はじめた頃は、主に賛同してくれた四つの修道会が運営する学校の学生がボランティアとして参加してくれました。最初はボランティアグループとして始めましたが、6年前にしっかりした組織にしようということでNPO法人化しました。
日頃の子供達の様子について語る松村さんです。
AIAの学習支援はどのような子どもを対象としているのですか。
足立区の場合、公立学校に外国にルーツを持つ子どもが多く入学していて、そうした子どもたちのために日本語学習のための制度を設けています。しかし、なかなかそれだけでは足りないという現状もあり、より十分な日本語学習の機会を得たいということで、私どもを利用することになります。特に、ここ数年で地域に増えた中国にルーツを持つ子どもたちは、来日して直ぐに学校に入学し、ほとんど日本語が理解できないまま学校に通うケースも多いです。
現在AIAに通ってきてくれている大人や子どもたちのルーツの約半数は中国、約半数はフィリピンですが、ほかにもさまざまな国にルーツを持つ人たちが在籍しています。
学習支援はどのように行なっているのですか。
現在、ボランティアさんが約40名いて、学習支援は一人の生徒に対して一人のボランティアさんがつき、対面のマンツーマン形式で行います。ボランティアさんには大学生、社会人、お仕事をリタイアした方等様々な方がいらっしゃいます。学習内容は教科の補習及び日本語の学習となります。ある程度日本語のできる子どもでも、日本語で教科の授業を受けるのは大変ですので、習熟するには一定の時間がかかるようです。ここでは、そうした子どもたち一人一人のペースやニーズに合わせて学習をサポートしています。
また、AIAでは子どもたちが進学する際の奨学金や支援金などの制度も設けています。
学習室です。
子どもの日本語能力等の状況が変化すると教えるボランティアに求められるスキルも変化するのですか。
数年前までは、AIAではある程度日本語がわかる子どもたちの教科学習をサポートするということが中心でした。しかし最近では、先ほどお話したように来日して間もない子どもたちが増えてきており、まずは日本語を一から勉強していく必要がでてきています。また、日本語以外の言語を使って子どもたちに教科の勉強を教えるというのは、多くのボランティアさんにとってハードルが高いという課題もあります。
ただ、初めは翻訳アプリなどを使いながらコミュニケーションをとることもありますが、子どもたちは日本語を覚えるのも早いですし、仲良くなるとすぐにそれがなくてもコミュニケーションが取れるようになります。
学習風景です。
学習教材がそろっています。
外国にルーツを持つ大人への支援はどのようなものなのでしょうか。
現在、18名の大人の方が日本語の勉強に来ています。パートや仕事、子どもの学校の面談や先生からの連絡といった場面で使う生活に根ざした日本語の学習、ビジネス日本語や検定のための日本語の学習など、そのニーズはさまざまです。ただ、大人の場合、仕事が忙しくなると日本語学習の時間がなかなか取れなくなってしまうという課題もあります。
また、子どもが学校に通っていると、保護者のもとには学校あるいは区役所などから様々な書類が送られて来ますが、それを見ても内容を理解するのが難しいというケースも多いです。それをAIAに持ってきてもらい、内容を一緒に確認をしたり、書類を書くお手伝いをすることなども大事な役割です。
年間行事としてどのようなプログラムがあるのですか。
毎年秋に遠足に行っています。今年はみんなでボウリングに行きました。野田公園のアスレチックや水族館や鉄道博物館に行ったこともあります。また、12月にはクリスマス会、夏休みには小中学生がAIAに学校の宿題を持ち寄るサマースクールも行っています。こうした年間行事を通じてさまざまなルーツの子どもたちが友情をはぐくむことができます。
クリスマス会を楽しみました。
アスレチックに遠足で行きました。
コロナの時はどのようにしたのですか。
もともと、私たちの学習支援方法は対面にこだわっていました。しかし、コロナ禍で対面授業の実施が難しくなってしまったため、生徒のために事務所にコンピューターを複数用意して、生徒がAIAに来て自宅や職場にいるボランティアさんとオンラインでコミュニケーションをとるという方法を取れ入りました。このシステムはコロナ後もケースバイケースで利用しており、忙しいボランティアさんや遠方のボランティアさんも活動に参加しやすくなったというプラス面もあります。
現状抱えている課題はどんなものがありますか。
足立区では外国にルーツを持つ子どもの数が増加し続けています。公立学校では来日した子どもたちの日本語学習のための制度もあります。しかし、より多くの日本語学習の機会を確保するため、足立インターナショナルアカデミーに入会する子どもが増えています。このような現状の中で、AIAでは支援の要となるボランティアさんの人数が足りず、苦労しています。特に、最近は入会希望者が急激に増えているため、ボランティアさんが見つからないということで入会をお待ちいただく場合もあります。
また、足立区には外国人の子どもたちの教育支援をする様々なNPOやボランティア団体があり、それらの団体がお互い連携・協力しながら課題の解決にあたっています。
現状について語る安藤神父様と松村さんです。
活動をやっていて良かったと思う時はどんな時ですか。
子ども達が楽しそうにしているところや成長を見ていられるので、やっていてよかったなと思います。日々の小さな出来事を見ることが楽しみです。また、ここに通っていた子どもが大きくなって、元気に顔を出してくれた時は嬉しく思います。将来的にAIAで勉強していた子どもたちがボランティアとして活躍してくれればいいなと思っています。