愛の奉仕活動紹介

愛の奉仕活動紹介: Vol.22 JOCカトリック東京働く人の家

2024年12月19日

「JOCカトリック東京働く人の家」訪問レポート

今回は、江東区永代にあるJOCカトリック東京働く人の家を訪問させていただきました。この施設は東京JOC(ジョック)の活動拠点や日本JOCの事務局として利用されています。JOCは「カトリック青年労働者運動」のフランス語の略です。この運動は1900年代の初頭のベルギーの司祭であったカルデン神父様(後の枢機卿)と何人かの若者によって始められました。当時、ベルギーでは多くの若者が労働者として過酷な環境もとで非人間的な扱いを受けていました。カルデン神父はこれらの若者の声に耳を傾け、彼らが人間としての尊厳を取り戻せるよう若者と活動を始め、その後その運動が世界的に広まりました。日本においては、1949年に九州の小倉に最初のJOCが設立され全国に広がりました。

当日はJOCの協力者であるピエール・ペラール神父様と日本JOCの全国会長新谷葵さんにお話を伺いました。

JOCカトリック東京働く人の家の正面入り口です。右側が蔵の中を改装した作りとなっています。

 

食堂から外を見た風景です。まさに隅田川のリバーサイドビューです。

 

食堂兼集会室でインタビューをしました。

JOCカトリック東京働く人の家はJOCの活動拠点として位置付けられますが、JOCとはどのような活動なのですか。

JOCは18歳から35歳までの働くまたは働きたいと思っている若者のグループです。

学生もその多くがアルバイトをしながら勉強をしているので、私たちのグループに入ってきます。JOCでは活動の計画、目標は若者のリーダー達が中心となって企画していきます。

私たちの活動は、「見る」「判断する」「実行する」というプロセスで勧められます。まず自分たちの仕事とか生活の現状を見ることから始めます。そして、常識とかに捉われず、イエスの生き方とか人を大切にするという価値観と心の目で判断をしていくことになります。この時に、他の仲間の考えを否定するのではなくお互いを大切にしながら自分の考えを伝えていきます。通常、友達同士で話す時は、現実の状況を話すことはありますが、なかなか、どうしてそうなっているのかということまでは踏み込んで話すことは余りありません。私たちは話し合いの中で、現状に至る原因をみていって、その背景やそのことで苦しめられている人は誰なのか、また反対にだれが豊かになっているのかということを考えていきます。そして、現状と理想とする環境や生活を見極め、理想に近づけるためにどう行動するかを考えます。JOCの集まりでは仲間の話すことを否定せずに受け入れる雰囲気があり、集まる若者たちがやすらぐ場所を目指しています。(新谷)

JOCは青年が置かれた現状を見ながら、自らで意識と現状を変革していくような環境と場所を提供しています。判断のところではイエスの生き方に照らし合わせたものとなっているかを協力者がサポートしています。それは単なる話し合いではなく変革につながる活動、現状をよくする活動です。若者の養成の出発は外からの教えではなく、若者自らの気持ちを引き出して「見る」、「判断する」、「実行する」というプロセスで行います。このJOCのプロセスは毎回変わりませんが、当然参加する人が次第に変わっていきますので、常にその内容は変わってくることになります。(ペラール神父様)

JOCの歴史について語るペラール神父様です。

 

若者の活動について語る新谷さんです。

 

JOCの意義が表現されています。

JOCはカトリック信者以外の人も入っているのですね。

信徒以外も受け入れていますが、価値観はイエスの生き方に基づいた判断していくことになり、将来はイエスの生き方に習っていくことになるということで宣教の場でもあると思っています。排除ではなく受け入れること、人の状況をまず聞くこと等活動のプロセスはイエスの生き方に学んでいます。

JOCカトリック東京働く人の家が作られた経緯について教えてください。

働く人の家という施設は、信者でない働く若者でも集まりやすいようにと教会とは別の施設として兵庫県高砂で設立されたのが最初です。その後全国に作られていきました。東京でも働く若者が集える場所を要望していたところ、1974年に東京教区に寄付された建物を白柳枢機卿様のご尽力で東京働く人の家として使わせていただけることになり、東京JOCの活動拠点となりました。当時は大原神父様や吉田神父様が協力者の中心となって若者のサポートをしていました。それ以来、寄付を募りながら何回か改修を重ねて現在のこの建物となっています。

入口のサインボードです。

 

ミサができる小さな部屋があります。

現在、JOCはどのような活動をここで行っているのでしょうか。

私達は働く若者が集まる定例会をコロナ前までは毎週土曜日に行っていました。この定例会では先ほど述べたように、若者たちが主体的に「見る」「判断する」「行動する」というJOCの基本に沿ったプロセスで話し合いが行われます。その中では、各自から例えば「上司とのコミュニケーションがうまく取れない」「世間の動きを知らない」「眠れない」「元気になりたい」というような実行が可能な範囲の内容をテーマとしてあげて、それに対して皆がどう思うかを話します。今、日常生活で若者は「あなたはどう思うか」と聞かれる機会が少ないので、この自分の考えを話すことは大切だと思います。そして、みんなの意見を聞いた上で、各自がどう行動するかを考えて実行してみるということになります。この定例会では参加者全員でテーブルを囲み食事をすることを大切にしています。ここでは、大人はあくまでも協力者として判断のアドバイスをするにとどまります。この定例会はコロナ禍で一旦は集まれなくなりましたが、早い時期に月1回で再開され現在に至っています。毎月の定例会の他には、先日行われたJOCカトリック東京働く人の家の50周年の集会もここで開催しました。毎年若者のクリスマス会も開催します。

また、ここには泊まれる小部屋がいくつかあるので、若者がゆっくり休みたい時やJOCの集まりがあって全国から若者が集まった時になどに宿泊場所として使われることもあります。

さらに、ここで専門家による若者の職場における労働相談もやっています。最近は外国

人の若者たちからも様々な問題の相談を受けています。

毎年財政キャンペーンの一環として、自分たちで作ったカレンダー持って各教会を廻って販売しています。この活動で、小教区の若者と話す機会を得ることができます。

この施設は、景色もよく設備も充実しているので、空いている時に他の団体も使ってもいいと思っています。

JOCの活動の一端を知ることができます。

 

泊れるような部屋が用意されています。

 

幼児連れでも参加できるようベビサークルも用意されています。

永代カフェを始めたとのことですが。

定例会は基本的に若者の集まりですが、去年から原則として毎月1回第3日曜日にOB・OG等の大人が集まれる場所として永代カフェを始めました。永代カフェでは、8月の松浦悟郎司教様をお迎えした「平和をつくるためのダイアローグin永代カフェ」、9月には映画『ブラザー・サン シスター・ムーン』の上映など各回でテーマを決めて開催しています。昨年の夏にはビアガーデンも行いました。開催に付いては不定期となっており、Facebook等で情報を発信していますのでご興味のある方はご覧ください。

隅田川を眺めながらビールを飲めるとのことです。

集う若者の現状はどうですか。

80年代に比べてJOCの参加者数は減少していますが、その存在の重要性は増していると思います。特に東京の場合、若者は距離的に離れ、時間的に心理的にゆとりがなくて友達がなかなか作れないでいます。ここには現在、正規・パート・派遣等様様な働き方の若者が集まっています。コロナ禍を経て、集まる若者の生活にも変化が生じています。若者達は職場におけるシフト制や度重なる残業で精神的にも肉体的にも疲れてしまい、睡眠時間が足りていない人も多いのです。さらに、忙しさの中で食事も規則的に取れていないという現状もあります。定例会の各自からの話題にも「眠れない」「元気になりたい」「時間がない」ということがよく取り上げられます。そして、職場や家庭環境の厳しさから精神的に病んでいる若者が多くなってきているように思えます。家庭でも職場でも自分の気持ちを出して会話することが難しくなっているのではないでしょうか。

この様な現状の中で、JOCのように若者たちが、安心して心を開いて話す場があることは大切だと思います。若者は社会で挫折した場合でも、ここに来て、みんなに話をするうちに自信をつけて社会に戻って行くようになります。

また、最近の傾向として、ミヤンマーやベトナムの働く若者が参加するようになってきました。ここでは、私も時間をかけて外国から来ている若者と接することができます。

階段わきの壁には今までの活動の写真が貼ってあります。

外国人の働く若者にとってJOCはどの様な存在なのですか。

ある外国人の若者からは、祖国から来て、日本語も十分にできないまま職場に入り、職場の日本人と思う様には話せない状況にあって孤立していた時に、JOCに来て仲間がゆっくりと自分の話を聞いてくれていて、安心して話せる様になったという話を聞きました。

また、比較的年齢がある程度上になると若い人と繋がることが難しくなりますが、JOCでは年齢に関係なく仲間と話すことができるという話も聞きました。

ペラール神父様は来年帰国されるとのことですが。

私は札幌から15年前に来て東京JOCの協力者として働いています。今後、JOCの指導をしていく教区司祭、特に日本人司祭がいないという問題があります。先程も話しましたが、大原神父様や吉田神父様が担当していた時期もありました。近年、小教区司祭の役割が重視されて小教区外の社会の中の活動を担当してもらえる方が見つからないというのが現状です。JOCの活動自体は協力者としてOB・OGがいて、現在も一緒に活動しているので私が帰国した後も続いていけると確信しています。

現在の課題はどんなものがありますか。

コロナ禍後に現在まで定例会が月1回の開催となっていますが、コロナ禍前と同じように週一回開催に持って行けないかと思っています。若者の現状をみれば、多忙、疲れがありここに集まること自体が難しい状況にありますが、本当はこのような現状に抗うためにも集まる回数を増やす必要があるのではないかと思っています。

活動をやっていて良かったと思う時はどんな時ですか。

参加している仲間が元気になっていく姿を見る時や、自分でももやもやしている時にここに来て仲間に会うと元気がもらえます。一人で考えているとどんどんわからなくなるが、みんなと話すことで自分のなかで整理がついてきて一歩前に進める様になります。

ここの仲間が歳をとっても人生の仲間であり続けているOB・OGの姿をみて、自分たちもそうありたいと感じています。