愛の奉仕活動紹介

愛の奉仕活動紹介: Vol.16 葡萄の家

2024年07月22日

「葡萄の家」訪問レポート

今回は、千葉県柏市にある障がい者のグループホーム「第一ぶどうの家」を訪問しました。この施設は松戸市に本部を置くNPO法人葡萄の家によって設置運営されています。NPO法人葡萄の家は障がい者(児)やその関係者の人たちに対して、障害者総合支援法に基づくグループホーム(共同生活援助)の設置運営やショートステイ、移動支援事業並びに障害に関する人材育成、相談、普及啓発事業などを行っています。現在取り組んでいる主な事業としては、定員4名のグループホーム「第一ぶどうの家」の運営の他、障がい者と健常者がともに集う「おもしろ実習教室」や「ふれあいコンサート」を開催しています。そして、この法人の理事長と副理事長を始め、設立や運営に多くの信徒の方々や神父様方がかかわっておられます。

玄関にはマザーテレサの言葉やマリア像が利用者を見送り、迎えてくれます。

 

「第一ぶどうの家」は東武アーバンラインの逆井駅から歩いて10分ほどの住宅団地の一画に建っています。築50年ということですが、昨年の末に外壁と屋根塗装を終えたばかりとのことで手入れの行き届いた普通の住宅というイメージです。

第一ぶどうの家の外観です。

 

お邪魔すると、理事長の東さんと副理事長の西手さんが玄関で迎えてくれて、まずは施設内を案内していただきました。その後、その日いてくれた利用者の方と昼食をともにしました。昼食後、東さん、西手さん、荒井さんにお話をうかがいました。

左から2人目が西手副理事長、右に東理事長、荒井さんとなります。

 

ダイニングでインタビューをしました。
東さんが障がい者支援について関心を持たれたきっかけは何だったのですか。

20年位前にボランティアとして知的障害者施設をお手伝いにいったことがありました。丁度そのころ、父親を事故で亡くして落ち込んでいる時期がありました。私が落ち込んでふと暗い顔をしていると、いつもは人が食べる分まで取って食べてしまう知的障害を持った仲間が、私の心を読むかのように、自分のデザートを私に渡し食べるようという仕草をしました。その時、知的障害を持った仲間に慰められ、障がい者の人のやさしさにはっとした気持ちになりました、そのことを、知り合いのシスターに話をしたら、シスターから、公教要理でさんざん習った「わたしの兄弟であるこの最も小さい者の一人にしたのは、わたしにしてくれたことなのである。」というイエス様の言葉の意味がようやく分かったのね。」といわれました。この体験をきっかけに、それまで勤めていた職場をやめて、障がい者福祉施設に勤めることになりました。

インタビューに熱く語る東さん(右)と西手さん。

 

自らグループホームを立ち上げようとしたきっかけは。

私が障がい者施設で働いていた当時は、障がい者が家庭以外で居住する施設が、自宅からかなり離れた地域の交通の便もよくない比較的大規模な施設に入るのが当たり前のようになっていました。例えば、東京の人が秋田にとかもありました。私は、その様な現状の中で、一人一人が地元の近くで、家庭的な雰囲気、つまり都会の中の大きな看板のある施設ではなく、住宅地の一般住宅で生涯暮らすことができる施設ができないかと思い、澤田神父様を始めいろいろな人に相談したところ、静岡のラルシュを紹介されました。ラルシュを訪れて一緒に働いている中で、支援する者とされ者という関係ではなく、仲間として助け合う共同体という考え方に共鳴しました。その後、グループホームを立ち上げてこのような共同体を作ろうと思いました。

実際にグループホームを作るとなると色々大変なことがあったと思いますが。

まず、ホームの基礎となる家の確保の問題がありました。2年間くらいあちらこちら探していると、たまたま、親戚の友人が田舎に戻ることになり築30年の古い家だけれども安く提供できるがどうかという話がありました。見てみると、座敷や応接間があり、改装すれば1階に複数の部屋ができるような間取りになっていて、障がい者の人が1階で居住可能であり、縁側があるので採光が取りやすいなど施設に向いていることが分かりました。また、障がい者施設では重要な周辺の方々のご理解も得られることが分かり、ここに決めることにしました。賃貸ではなく購入にこだわったのは、賃貸の場合施設に合わせた改装をしたものの、代替わりによって大家ともめて出ていかざるを得なくなったケースも何件か見てきていて、入居者の終の棲家となりうる施設でそれは避けたいとの思いで購入する選択をしました。

住宅は入手できたものの築30年という物件であり、障がい者施設への改装は相当の予算を必要としました。当時は、一定規模以上の施設が主流でグループホーム建設には民間の資金に頼らざるを得ませんでした。神父様方や支援者の方のつながりで、日本財団を始めいくつかの支援団体から援助を受けることができるようになり、1年以上かけて改装を行い2009年月に開設に至りました。

今は珍しい廊下があり、各居室に明るい光がはいります。台所でしっかりメンテナンスがされています。

 

施設の現況はどのようになっていますか。

定員が4名で各自が個室で居住できるようになっています。1名が今年突然帰天してしまった為に、現在3名が居住しています。1階には台所と食堂、それに浴室があります。

2階には職員の宿直室と訪問客の為の客室があります。障がい者施設なのでスプリンクラーが全室設置されていて、そのため食堂で焼肉をすると警報が鳴ってしまいます。また、地域の人達に役立てる様にAEDも設置しています。内装や設備も必要に応じて様々な援助金を申請して更新をしていいます。

宿直室が2階にあります。防災の集中コントロールパネルです。

 

ここに住まわれている方の状況に付いてはいかがですか。

ここには、知的障がいや精神障がいの、軽度から重度の方までが入居の対象となります。現在は、重度の方1名、軽度の方2名の方が入居しています。日中は、重度の方はデイケアの施設、軽度の方は障がい者雇用で働きに出ている人もいます。入居のきっかけは行政や知人のケアマネージャーからの紹介で来られる方が多いです。また、親御さんが高齢で、障害を持たれたお子さんの将来的の行き先が心配ということで相談される場合もあります。

現在国の方針で、受刑者や行き場のない人をグループホームで受け入れてほしいという意向がありますが、私共は障がい者に限定をしています。

終の棲家として入居されるケースもあるのですね。

このホームを終の棲家と考えて親が入居させている場合もあり、またそのように考えて住まわれている方が多いと思います。将来的に老人介護が必要になっても、この施設は重度の障がい者の入居者にも対応しているので特に問題はありません。

コロナの影響はどのようなものがありましたか。

コロナの影響は結構ありました。この施設では、重度の人から軽度の人まで一緒に住んでいます。重度の人は、うがいや手洗いという基礎的な予防策が自分ではうまく取れな いために、その人たちを基準として外出などのルールを作らざるを得ませんでした。そうすると、軽度の人はうがい手洗いも出来るのである程度自由に外出出来るはずですが、指定された車での外部作業所への送迎となり、寄り道禁止等、自由を制限せざるを得ませんでした。外部のヘルパーも感染の危険があったため、今までは一緒に外出していたのをやめて、その代わり施設内の人だけで外出するという方針にならざるを得ませんでした。そうなると、軽度の人は重度の人がいない他の施設に移るという事態になりました。一方、残った人は常に一緒に食事をしに行ったり外出したりして関係がより密になったという積極的な一面もありました。

昼食を入居者の方と一緒にいただきました。

 

この施設で行っているプログラムとして、荒井さんが参加しておられる習字があるとのことですが。

この施設では書道をプログラムとして取り入れています。禅に関わることばを集めた本で見本が掲載されているもの利用して、毎回一つの言葉を選んで、みんなでその意味を利用者と一緒になって分かち合い、その後、各自本のお手本を見て書いて、お互いに批評をしあいます。時には、一緒に参加してくださっている神父様にお手本を書いてもらい、それを見ながらかくこともあります。習字は文字を書くという表現行為で自分を解放するという楽しさを共有でき、その後にお互いの作品について話し、その時の代表作を飾ります。習字の後には、皆で自分たちの1カ月の出来事を話し合う時間を持ちます。

習字のボランティアについて語る荒井さんです。

 

施設以外でも色々活動をされていると聞いていますが。

この施設以外で、障がい者と健常者がともに集って楽しい経験ができる機会を提供する活動として「おもしろ実習教室」や「ふれあいコンサート」を開催しています。今度、8月に松戸で行われる「おもしろ実習教室」では、技術士の方を講師に招いて三角ヘリコプターを作って飛ばすという体験型のプログラムを提供します。また、「ふれあいコンサート」は常磐線沿線出身あるいは在住の各方面で活躍中の実力派メンバーによって結成された「バージョン・バロック・アンサンブル」を中心に行ってきました。今度、私共の15周年を記念する演奏会を10月にカテドラルで行う予定にしています。ご興味のある方は、私共ホームページをご覧ください。

現在悩んでいることはありますか。

今まで外部に委託していた入居者の病院への付き添いが、コロナ禍で様々な規制で慣れた方が付き添えるとは限らない状況となり、ヘルパーさんが適正に対処が手出来ない場合があり、ホームの人でやるようになっている。現在、一人ボランティアで私たちホームの職員と一緒に付き添ってくれる人がいるが、継続してお手伝いいただける方がもう少しいればありがたいと考えています。以前は、修道会の比較的若い方が来ていただいたこともあったのですが、現在は難しくなっています。

やっていて良かったと思う瞬間はいつですか。

家庭的な雰囲気を作ろうとしても、どうしても家庭と同じようにはならないのですが、利用者の方を担当しているケアマネージャーの方から、「〇〇さんは、ずっとこの家に住みたいと言っていますよ。」という言葉を聞くと、やっぱりうれしいですね。また、外出から帰ってきたときに明かりがついていてお帰りといってくれる人がいるのがうれしかったということも聞きます。我々が当たり前と思っていることが本当は大切だということを思い返させてくれます。