お知らせ

カリタス東京通信2023年10月号

2023年10月03日

かけがえのないいのちを育む「家」として

東京サレジオ学園 施設長 田村寛神父

「行ってきます!」「行ってらっしゃい!」子どもたちは家である施設から学校に通学し、塾や習い事、地域のスポーツクラブなどにも通ったり、友だちとの付き合いで外出したり、高校生でアルバイトに行く子もいます。児童養護施設は全国に約600か所あり、多くの施設が戦争の犠牲となって親を失った子どもたちの保護救済を目的として、1947年の児童福祉法の制定に結びつき公的責任として位置づけられました。現在では予期できない災害や事故、親の離婚や病気、また不適切な養育を受けている等、子どもの入所理由は様々ですが、家庭による養育が困難な子どもたちが生活する「家」としての役割を担い、一人ひとりを大切にすることを心がけています。 どんなに幼くても、分離などの喪失体験を経験してきた子どもたちであり、成長とともにその事実を受け入れていかなければなりません。子どもにとっては安心して自分を委ねられる大人の存在が何よりも必要ですが、施設に来ることになった子どもたちは親や親族など本来安心できる存在の大人から逆に不適切な関わりを受けてきています。年齢が小さいうちであれば、なおさら抵抗することも逃げることもできませんし、記憶にない頃であれば、潜在的に受けているダメージも大きいと思います。施設での生活はゼロからのスタートではなく、マイナスからのスタートなのです。 「日本カトリック児童施設協会」という児童養護施設だけでなく、乳児院や母子生活支援施設、自立援助ホーム等を含めた全国的な組織があり、本年(2023年)4月現在77施設が所属しています。「カトリック施設」という名のとおり、ほぼカトリックの教区や修道会、信徒によって設立されました。国が教育と社会福祉に十分に力を入れることができなかった時代、多くのキリスト教の学校と施設がその役割を担ってきましたが、時代の変化に伴って各施設で働く職員の大半がカトリック信徒ではなく、司祭やシスターがいない事業所も増えているのが現状です。私が働いている東京サレジオ学園(東京都小平市)も100名近い職員のうち、カトリック信徒は数名ほどで司祭は私一人ですので、むしろ信徒ではない多くの方々がサレジオの創立者であるドン・ボスコが大切にした「子どもたち自身が愛されていると感じられる関わり」を深く理解して子どもたちの養育に携わって下さっていることで日々の営みが継続されていると言えますし、今後は各施設が地域の教会との連携を深めていくことも大切です。 子どもたちが大人への信頼を取り戻したり獲得したりするには、関わる側の大人が徹底して子どもに寄り添うことが求められます。そして私たちが自分の弱さや不足を正直に認めて「祈る」姿勢を持つことが大切です。今秋11月末にコロナ禍以来、実に4年ぶりにカトリック児童施設の全国大会を東京都内で開催する方向で準備しています。大会の締めくくりには菊地大司教の司式で派遣ミサを行う予定です。東京教区の皆様におかれましても是非関心を持って頂き、子どもたちのため、そしてカトリックの精神で働く職員のためにお祈りと応援をよろしくお願い致します。