カリタス東京ニュース

カリタス東京ニュース2024年1月号

2023年12月19日

カリタス東京ニュースLINE版発刊によせて

カトリック東京大司教区 大司教 菊地 功

カリタス東京が創設され約1年半が過ぎ、活 動も少しずつ立ち上がってきていることを嬉しく思います。またこの度「カリタス東京ニュー ス」が発刊されるとのことですが、教区の委員 会組織としてしっかりと情報発信していくこと は必要なことだと思います。カリタス東京が関わる、愛の奉仕、正義と平和、人権問題、災害 対応、環境問題などの情報や教区内の活動団体・ グループの活動の様子などが発信される予定とのことです。

教皇ベネディクト十六世の「神は愛」に記されているように、教会に求められる三つの務め は、神の言葉を告げ知らせること、秘跡を祝う こと、そして愛の奉仕を行うこと(カリタス) です。また教皇フランシスコは様々な発言の中 で、私たちが「ケアの文化」を構築して行くことを強調されています。カリタスの行動は他人 事ではなくて、わたしたち一人ひとりのキリス ト者としての務めなのです。カリタス東京の取 組が一部の人の活動に終わることなく、教区内 のすべての信者が参加して「みんなのカリタス」 となって発展していくことを期待しています。

 

インフォメーション

関東大震災時の朝鮮人・中国人虐殺から100年 “わたしたちは忘れない”
講演会

  • 講演テーマ:「描かれた朝鮮人虐殺を読み解く」
  • 講師:新井勝紘氏(専修大学元教授、高麗博物館前館長)
  • 日時:2023年12月23日(土)午後2時~4時
  • 場所:カトリック麴町教会 ヨセフホール
  • 主催:カトリック東京正義と平和の会
  • 後援:カリタス東京
  • 詳細:PDF(432kb)ダウンロード

カトリック東京大司教区 世界病者の日ミサ

  • 日時:2024年2月11日(日)午後2時開始
  • 場所:東京カテドラル聖マリア大聖堂

 

愛の奉仕活動の紹介コーナー

教区内には数多くのカトリックの精神にもとづいて運営されている社会福祉団体、教会あるいは信徒の関わっている愛の奉仕活動グループ があります。このコーナーではこれらの団体・グループの活動を紹介していきます。

1) ぶどうの木とくでん

今回は東京の練馬区にある徳田教会で開かれているフードパントリーぶどうの木とくでんを訪問します。徳田教会は西武新宿線の沼袋駅から歩いて15分の住宅街にあり、フロージャック神父様が始められた社会福祉法人慈生会の老人福祉施設やベタニア女子修道会修道院に隣接しています。また、歩いて20分くらいのところには「つくろい東京ファンド」の生活困窮者用シェルターがあります。

徳田教会の正門前に「ぶどうの木とくでん」ののぼりが設置され開催を告知しています。

 

ぶどうの木とくでんは徳田教会の信徒会館を使って、隔月の最終土曜日に信徒が中心となって運営されています。スタッフは代表の三上さんを含めて6名で、内1名は利用者の方がスタッフとしてお手伝いをしています。

会場の信徒会館入り口です。

訪問した日は9月最終土曜日の配布日でした。配布日当日の朝10時頃からポランティアの方が集めたお米や食品を倉庫から信徒会館に運び入れます。そして、麺類や調味料など種類ごとに数の確認をして、その日の利用者予定数を考慮して利用者全員に渡す基本的セット内容を決め、それに従って袋詰めを行います。この日の基本セットは、カレーなどのレトレル2種類、缶詰3つ、ラーメン2袋でした。お米は、5Kg、2.5Kg、パックご飯の3種類を用意します。その他、スパゲティや素麺などの麺類、お菓子、飲み物、洗剤、テッシュ、野菜などを種類ごとに机の上に配置して一人何個という数を決め、その情報をスタッフが共有します。

お米を5Kgから2.5Kgへ小分けしていきます。

 

かぼちゃは切って小分けし、じゃがいもと玉ねぎを小袋に入れて準備します。

 

洗剤、マスク、トイレットペーパー、ティシュー等の日用品です。

 

配置終了しました。

 

スタッフに配布物の説明をしています。

 

配布開始前に記念撮影。2名が缶詰を買い出しに行っていていませんでした。

 

配布は午後3時から夕方の6時までの3時間行われ、予約した利用者が早い人は時間前から来られ、終了間際に駆け込んでくる方もいました。この日は68名の方からの利用予約がありました。利用者は受付を済ませると、ボランティアから基本セットの袋を受取り、会場を一回りして、各々のグループから好きなものを1〜2つ選んでいきます。

前回から、ベタニア女子修道会より利用者にお弁当の提供が始まりました。この日のお弁当のメニューはガバオライスにお彼岸のおはぎ付きでした。ガバオライスは数の調整が可能なので試しにやってみたとのことでした。シスターが受付に座り、食品を摂り終わった人にお弁当引換券を渡し、利用者の方は近くの修道会のホールへ受取りにいきます。ホールではお弁当をその場で食べていくお子さん連れのお母さんもいたりして、シスター方が憩いの場を提供しています。私も試食で頂きましたが大変美味しかったです。

 

シスターとお弁当の数量の打ち合わせ中です。

 

この日のお弁当、ガバオライスとおはぎです。

 

利用者の多くはリピーターの方のようで、利用者の方がスタッフの方に近況などを話していました。新しく申し込まれた方には、三上さんが状況を確認している場面も見られました、また、アフリカ系の方が来られた時は、スタッフがフランス語で対応をされていました。5時頃に商品が少なくなってします、買い出しに行くハプニングもありました。6時には予定されていた利用者が来られて後片付けをして終了となりました。お疲れ様でした。

 

ここからは代表者の三上さんにインタビューになります。
この会を始めたきっかけはなんですか。

東京教区の宣教司方針の具体化をプロジェクトで検討する中、コロナ禍となり教会でも仕事ができなくなっている人が出てきている状況をみて、地域社会の中で生活に困っている人を支援する活動を行うことが俎上にあがりました。その後、フードパントリーの設置が教会の手続きを経て徳田教会の支える活動として承認されて、22年4月からスタートしました。歴史的に徳田教会は山谷での活動等と結びつきが深かったという背景があります。

食品類はどのように集められているのですか。

教会の人達全体で支え合うということを大切にしようということで、信徒の方々の献品でスタートすることになりました。1年目は信徒の方々の献品で賄われていました。2年目に入ると信徒方の家の在庫品も少なくなり、賞味期限の問題もあって、皆さん新たに購入して寄付してくださるように変化しました。そして、数も少し足りなくなってきて、足りない分は教会から支援を受けて購入する様になっています。

教会の周辺の方からの食料の寄付を求めて努力されていると聞きましたが。

生活困窮者の問題は単なる教会だけの問題ではなく、地域社会の問題でもあるので、地域の方にも関心を持ってもらえるよう、第一日曜日にスタッフ5人で教会の周辺の400軒のお宅に食糧寄付を募るチラシを配布しています。その結果、毎回10~12世帯近くの方から寄付が集まっています。この反応には驚いています。寄付される方も初めて教会の敷地内に入る方もいるのです。

利用者さんの状況はどうでしょうか。

私たちの出来る規模からして、SNS等での利用者の募集はしていません。最初は、慈生会のセンターや社協で利用者を募ることから始めました。そして、事前申し込み制として、リピーターを重視してヒアリングをしながら利用者の方との繋がりを持ちながら運営しています。最近は、近くの「つくろい東京ファンド」から外国人を含む利用者が紹介されてみえています。現在60数名程度の利用者がいますが、規模的にはちょうどいいくらいの人数であると思っています。色々な所でやっているサービスを渡りで利用している方をどうするかという問題がありますが、山谷の経験から自分たちも充分な支援をすることが出来ているわけではなく、生きるために必死になっている方もいるのは事実で、あまり神経質になってもしょうがないと思っています。

ベタニア修道女会からお弁当が提供されてしましたが。

ベタニア修道女会はフロージャック神父様による設立の精神から、常に貧しい人のために尽くすことをしたいと思っておられ、その活動として利用者の方にお弁当を作って提供していただくことになりました。利用者の方は通常の食品よりお弁当を楽しみにしておられる方も多いように思えます。

現在困っていることはありますか。

私たちが充分なことが出来ているとは思わないので、利用者の方との関係性をどの様にしていくのかという難しさを感じています。また、生鮮品が少ないので、特に野菜類をもう少し調達できればいいと思っています。少数のスタッフだけの活動にならないように気をつけていいて、世代交代をスムーズに行い、人が変わっても継続できるような組織としたいと考えています。今、目の前にある貧困に対して主義主張を超えて手を差し伸べることができるのが教会の良いところであり、信徒の理解と応援を得られるように情報共有することが必要だと思っています。個人的には、さらに貧困の原因となっている根本的な問題にも目を向ける必要性も感じています。

 

2) 高円寺こども食堂

今回は東京都杉並区にある高円寺教会で開かれている「高円寺こども食堂」を訪問しました。高円寺教会は中央線の高円寺駅から歩いて15分くらいで、環状7号線からは少し入った静かな住宅街にあります。すぐ隣にはベリス・メルセス宣教修道者会の高円寺修道院と同会を母体とする光塩女子学院の初等科・中等科・高等科があります。

  高円寺教会入口に看板が出されています。

 

「高円寺こども食堂は」は高円寺教会の信徒ホールを使って、毎月第1、第3土曜日に開かれています。元々は、名前の通り「子供食堂」として始まりましたが、コロナ禍を経て現在はフードパントリーとして食糧支援活動をおこなっています。この活動には代表の石川さんを中心に信徒の方々、ペリス・メルセス宣教修道者会のシスター方、地域のボランティア、高校生・大学学生のボランティアの方々がかかわっています。訪問した日には横浜雙葉高校や法政大学の学生さんが参加されていました。

10月第1土曜日の配布日にお伺いさせていただきました。当日、7時頃までに信徒の方の友人で子供食堂の時からお付き合いしていただいている船橋の青果仲卸業者さんから野菜が配達されます。朝9時頃からボランティアの方々が集まってきて、信徒ホールに隣接する保管所から、お米やレトルト食品やお菓子などが運び出されます。各家庭の大人と子供の人数は申し込みの時に把握しているのでその数に合わせて、根菜類の配分個数を計算して袋に小分けする作業を行います。

 

野菜はまず並べられて数を確認していきます。

 

焼き芋の小分けの準備をしています。

 

一方、当日の配布予定である28個の買い物かごを机の上に並べて、かごに利用者の名前と家族構成が書かれた紙を貼って食品の分配の準備をします。その後、野菜や食品をかごに家族構成に合わせて分配していきます。配布するお弁当は大人用と子供用の2種類があり、コロナ禍で地元の飲食店を支援するために地元のレストランで作ってもらっているとのことでした。担当の方が2か所のレストランに車で取りに行き、持ち帰った子供用と大人用の二種類のお弁当合計85食分を、家族構成に合わせて袋詰めをしてかごの横にセットしておきます。そして、12時の開始時間までしばし休憩となります。

野菜を高校生のボランティアの方と小分け作業をしています。

 

近所のお寺から「お寺おやつクラブ」を通じて寄贈されたお菓子です。

 

利用者ごとのかごに食材を入れていきます。

 

かごには利用者の大人と子供の人数が貼ってあります。

 

この日の子供用のお弁当です。

 

この日の大人用のお弁当です。

 

 お弁当を大人と子供の人数に合わせて袋詰めします。

 

野菜・一般食材・お米・お弁当がセットされて渡す準備が完了しました。

 

配布時間の12時から午後1時半までの間に利用者の方が切れ間なく来られる状況となっています。赤ちゃんを連れた若い母親、外国人のお母さん、高校くらいの子供、お父さんが失業中の家族連れ等、さまざまな方が訪れています。ボランティアの方が利用者の名前を確認して袋詰めをする台までかごと弁当とお米を運んであげて、5Kgのお米があるのでほとんどの場合、自転車のところまで荷物を運ぶのを手伝っていました。初めての方が来られると、石川さんが事前に電話で話したその方の状況を確認されていました。午後1時半にほとんど予定利用者の方が取りに来た段階で、片づけをして解散となり、遅く取りに来る予定者のために石川さんが最後まで対応されていました。

 

代表の石川さんにお話を伺いました。
子供食堂を始めるきっかけはなんでしたか。

2016年に生活に困っている子どもたちの為の子供食堂というものがあると知って、当時豊島区でやっていた子ども食堂を見学するなど勉強をしました。その後、自分の地域でできないかということを考えていた時に、教会の信徒ホールを使って良いということになり信徒の方々にミサ後のお知らせ等でボランティアを呼びかけて、説明会と試食会を経て始めました。当初は20名くらい、その後児童館、ケースワーカー、学校を廻ってチラシ配布などを行った。結果、徐々に利用者が増えて約100名の方が利用していました。コロナ禍で2020年の3月から2021年1月まで休止し、2022年の2月からお弁当の配布という形で再開しました。そして、2022年の秋から野菜を食材に加えて配布するようになりました。

色々なボランティアの方々が参加しているみたいですが。

食事を提供しているときは、調理や配膳で20名くらいのボランティアが必要でしたが、フードパントリーですと10人程度でできるので原則的に2交代でやっていて、それに大学や高校から紹介されてこられるボランティアの方が5名程度参加しています。学生の方ではゼミの研究のために来られる方もいて、パントリーが終わった後に質問に答える時間を設ける場合もあります。

食材の調達についてどのようにされていますか。

野菜は信徒の知人に青果市場の仲卸業をやっておられる方がいて、子供食堂の時から野菜を無償・一部有償で提供していただいていました。フードパント―に代わってからは、お弁当のほかに配布する食材として野菜を利用しています。お弁当は、コロナ禍で苦労されていた地元のお店に作ってもらっています。お米は修道会を始め様々な寄付が届いています。お菓子は、「お寺おやつクラブ」に参加している地域のお寺から寄付を受けています。一般食材は地元の社協から分けてもらっていますが、数がそろわないので、セカンドハーベスト等から支援を受けたいのですが、都心まで取りに行く人材がおらず利用できていません。

資金面についてはいかがでしょうか。

資金面では信徒の寄付の他、主にNPO法人全国こども食堂支援センターや民間の福祉財団からの支援金を活用しており、何とか成り立っています。毎回、書類の作成等で追われることになり、その点苦労しています。

子供食堂に戻す予定はどうですか。

フードパントリーは生活困窮している人に家で料理をする数日分の食材を直接わたせるという点で、一緒に食事をする子ども食堂とは少し違う意味があるように感じます。それぞれに意義があり、今後、子供食堂に戻すにしても可能であればフードパントリーも続けてみたいとは思っています。

 

カリタス東京活動報告

2024年度予算作成

10月24日に開催されたカリタス東京常任委員会にて、来年度の予算案を審議しました。来年度も、初めの一歩として取り組んでいる「愛の奉仕活動団体・グループの連携促進」と「災害対応(平時)」を推進し内容を充実させていく計画です。

愛の奉仕活動団体・グループの連携促進では、今年開催した活動団体・グループの交流会を継続して実施します。さらに、団体・グループ関係者だけでなく、関心のある信徒も参加できるイベント開催を予定しています。

災害対応(平時)では、災害対応スタッフ養成に向けたトレーニングの実施、小教区で災害に備えるための手引書の作成などを計画しています。

来年度も、2月11日の世界病者の日ミサ、8月の平和を願うミサとイベントは、カリタス東京が準備して実施します。

広報活動として、この度立ち上げた「カリタス東京ニュース(LINE版)」を定期的に配信できるよう予算措置を行いました。

 

生活困窮者直接支援団体サポートグループ交流会の開催

9月に食糧支援や物資支援等で生活困窮者を直接的に支援している団体・グループの交流会を開催しましたが、12月2日にこれらの団体やグループを物資の献品や金銭的な寄付でサポートしている小教区のグループが集まって交流会を開催しました。現在、東京教区内では、山友会や山谷夜回りの会、カトリック東京国際センター等の為に、信徒から献品や献金を募って届けている14グループの活動が把握されていますが、その内11グループ17名が参加しました。交流会では各活動グループの自己紹介の後、3つの班に分かれて分かち合いが持たれ意見交換がなされました。最後に菊地大司教の「東京教区は困窮している人々のところに出かけていく教会でありたい」というお話をいただきました。

 

2月号は2024年1月22日に配信予定です。