カリタス東京ニュース

カリタス東京ニュース 2024年4月号

2024年03月21日

愛の奉仕活動の紹介コーナー

「四ツ谷おにぎり仲間」訪問レポート

今回は東京都千代田区にある麹町教会で行われている「四ツ谷おにぎり仲間」の活動現場を訪問しました。麹町教会は聖イグナチオ教会という名でも呼ばれて、JRと東京メトロの四谷駅の目の前という東京教区の中でも最も交通の便のよい場所にある教会の一つです。麹町教会は様々な国の人々が集う教会で、主日には日本語以外に英語、スペイン語、ベトナム語等様々な言語のミサが捧げられています。

麹町教会の全景です。

 

「四ツ谷おにぎり仲間」は毎週土曜日に麹町教会の厨房で作ったおにぎりと「おにぎり通信」、ご寄付頂いたホッカイロ等の生活用品を携えて、都心部である、千代田区、中央区の5つのコースに分かれて廻り、野宿をしている方々等を訪問しておにぎり等を手渡しながらその方のご様子を見たり、お話をする活動をしています。また、その中で、必要に応じて福祉事務所等への同行する活動もしています。このグループの活動は2000年4月に麹町教会の信徒の有志が、教会周辺の野宿をしている人々に何かできないかということで、自宅で作ったおにぎりを持って訪問をすることから始まりました。教会の厨房を利用することが認められ、おにぎり作製をご奉仕する人が増え、また訪問するコースも徐々に増えて現在では5コースとなっています。

2月の土曜日の活動日のお昼過ぎに伺わせていただきました。厨房のあるテレジアホールでは土曜学校が開かれていて、小学生がリーダーと一緒に楽しそうに活動をしています。厨房では一釜目の炊きあがりを待っているところでした。今日は合計12Kgのお米を2回に分けて炊き、おにぎりを80個作る予定です。ご飯が炊き上がると保冷剤に上に乗せられたバットに入れられ、通常は梅干しのおにぎりですが、この日は、ご寄付頂いた塩昆布を混ぜられた後、別のバットに移されて丁寧にかき混ぜながら冷まされます。

炊き立てのご飯を保冷材の上で素早くさましていきます。

 

ご飯がある程度冷めると、250gの分量で分けられていき、梅干しを乗せ、握りの作業に入ります。ふっくらと握られたおにぎりは海苔が巻かれ、サランラップで包まれて完成します。2釜目が炊き上がると同じ要領でおにぎりが作られていき、訪問班に渡すように5個ずつ包装されて一時保管されます。おにぎりの作製が終わると厨房の後片付けと掃除が行われ、作製班の活動は終了します。

250gずつ計量しています。

 

おにぎりは手際よく握られ一つずつラップで包装されて完成します。

 

訪問班の為にレジ袋に詰められて保管されます。

 

調理後は床掃除までして作製班は終了します。

 

本日の作成班のスタッフの方々です。

 

次は、訪問班の登場となります。教会周辺を担当する方がまず、付近の公園に住んでいる野宿者の方におにぎり等を持って訪問します。いつもの担当者と違うため、受けとってもらえるか心配していましたが、無事受け取ってもらい、話も出来てホッとしました。

公園にいる野宿者の方へ声掛けをします。

 

5時半を過ぎると、次々に訪問班の人たちが教会に集まり始めます。本日のボランティアの方は合計で14名、幅広い年齢層の男女の方で構成され、この日はイエズス会の神学生2名も参加していました。上智大学や他大学の学生が参加することもあるとのことでした。

6時になると、パトロールリーダーから班分けが発表になります。教会周辺のA班を除くB班からE2班に分けられます。コースを紹介すると、B班:有楽町・銀座・京橋・八重洲、C班:日比谷公園・国際フォーラム・丸の内、D班:亀島橋・茅場町、E1班:秋葉原・神田・常磐橋、E2班:九段下・竹橋・鎌倉橋の5コースとなります。いずれも大都会の真ん中であることがわかります。

訪問班が本日お渡しするおにぎり、おにぎり通信、ホッカイロです。

 

訪問班出発前のミーティングの様子です。

 

私たちはC班に入り、日比谷公園方面を担当することになりました。各班のリーダーは回る経路をよく知っているベテランの方が指名されているようです。ミーティングの中で、気になる野宿の方の安否の情報について、共有がなされます。ミーティングが終わると班毎に最寄りの駅まで地下鉄等で移動します。C班は四ツ谷駅から丸の内線に乗って霞ヶ関に向かいます。

6時頃に教会を出発し地下鉄等で各コースの訪問先に向かいます。

 

霞ヶ関で降りると、日比谷公園に入り、イベントで盛り上がっている大音楽堂の脇を通り、日比谷公会堂へと向かいます。日比谷公会堂の前には15人くらいの方の列ができていて、おにぎりと「おにぎり通信」とホッカイロを手渡しながら、何人かの方と話をします。

利用者の方に手渡しを始めたところです。

 

日比谷公会堂の前から松本楼の横を通って進んでいくと、ところどころのベンチに野宿者の方が佇んでいて、近づいて声掛けをしておにぎりを渡していきます。日比谷公園を出ると、祝田通りを進み野宿者の方に声掛けをしていきます。

公園内を野宿者の方を探しながら進みます。

 

野宿者の方に声掛けをしておにぎり等をお渡しします。

 

道端の野宿者の方に声掛けをしています。

 

次の目的地国際フォーラムに向かいます。イルミネーションが輝く有楽町から丸の内へ抜けるビジネス街の通りを進んで国際フォーラムに到着します。国際フォーラムの中庭のベンチでは、点々と野宿者の方が待っていました。声掛けをしながらおにぎりを渡していきますが、この場所がフォトスポットらしく、すぐ横では外国人観光客が男女で自撮りしているのが印象的でした。

東京国際フォーラムの状況です。

 

次は、東京駅の八重洲口から丸の内口を目指します。途中、地下道出口で待っている方に声掛けをして東京駅にはいります。地下連絡通路を通り、丸の内側の集合場所に到着しました。他のルートの班の方も、この丸の内口地下道へ集合します。

全部の班が集合したところで、訪問の状況について報告がなされた後解散となりました。

 

代表の高橋さんにお話を伺いました。
「色々な班に分かれて活動をしているとのことですが。」

私たちのグループでは、おにぎりを作る「作製班」、おにぎりと「おにぎり通信」を持って野宿者の方達等を訪問する「訪問班」、希望される方と福祉事務所や医療機関に同行する「福祉班」、『おにぎり通信』を執筆編集し、HPや公式ブログを管理している「編集班」、毎月第一主日にお米等の寄付の受付を行う「献米班」があります。「作製班」でおにぎりをにぎることから始めて、「訪問班」に参加していく方もいます。おにぎりよりも季節の話題や週間天気予報を載せた「おにぎり通信」を楽しみにしている方もいるほどです。また、訪問班から他の班に訪問時の状況がフィードバックされ励みになっているようです。

編集班によって作成された当日のおにぎり通信です。

 

毎月第一日曜日のミサに合わせて行われている献米活動です。

 

「ボランティアについてはいかがでしょうか。」

ボランティアの方が集まりやすい環境にあるのは確かです。2000年に始まった当初は、なかなか理解が得られませんでした。社会現象にともない、例えばリーマンショックは主として男性の正規・非正規労働者が、また、コロナではアパレル関係等で女性がそれぞれ職を失い、誰でもその立場に立ちうるという理解が広がるなかで、教会で開かれた大人食堂を通じて自分たちでも何かできないかと考える信徒の方々が増えたと思います。

「訪問される当事者の方々の変化に付いてはいかがでしょうか。」

若い人は一時的な収入でネットカフェとかに入れるのですが、その方々も路上生活一歩手前で、貧困者が減っているわけではありません。純然たるいわゆる路上生活は減っていると思います。しかし、有楽町、日比谷公園、幹線道路の道端などに路上生活者の人々が住んでいるのは事実で、新しく参加された方は「野宿者がいることを普段は見過ごしている」とよくおっしゃいます。コロナで緊急事態宣言が出た時も活動を継続しましたが、支援を必要とする方が増加し、作製したおにぎりが足りず、通常はコンビニで購入するのですが、コンビニにおにぎりがなくてその時は、マックのハンバーガーをお渡ししました。施設の個室化のために入居定員数が減少し、近県の施設に行かざるを得なくなる等、さまざまな事情で野宿を継続し、中には、体を壊して緊急搬送される方もいらっしゃいます。

「今後の活動についてどのようにお考えでしょうか。」

今後の活動としては、当事者の方が減っているので、一人ひとりにもう少し関わることを大切にしたいです。現在、その方法について、模索をしているところです。

いすれにしても、当事者の方がおられるのであれば、この活動を続けていこうと思っています。

 

「カリタス府中 こども食堂」訪問レポート

今回は東京都府中市にある府中教会で行われているこども食堂「LA MENSA DEGLI ANGELI」の活動現場を訪問しました。府中教会は聖家族教会としても知られ、京王線府中駅から歩いて10分ほどのところにあります。府中教会はミラノ外国宣教会の本部付属教会として始まり、1990年に東京教区の委託を受けて小教区の教会になりました。現在、本部は多摩に移転し、その建物の一部が信徒会館として利用されています。

カトリック府中教会の聖堂前にこども食堂の看板が出されています。

 

カリタス府中が運営するこども食堂「LA MENSA DEGLI ANGELI」(イタリア語で「天使たちの食堂」の意味)は、毎月第二、第四土曜日のお昼に教会の集会室で子供、親子連れを中心に教会の厨房で調理した食事を無料で提供しています。メニューは第二土曜日には月替わり、第四土曜日はカレーとなっています。また、カリタス府中は第四土曜日の午後に信者で現役の教師の方が子供の勉強をみる「スクールジョイ」という学習支援活動を行っています。

訪問したのは晴天に恵まれた2月の最後の土曜日の9時ころでした。教会内を案内してもらっていると、スタッフの皆さんが集まってきます。スタッフの方は毎回10数名おられて、信徒以外の方も数名、また、聖ヨハネ会のシスター方も参加しています。

本日のスタッフの方々です。

 

厨房では食材のカットが始まりました。イタリア風のお鍋2台で30人分のポークカレーを作ります。お肉は三元豚2.5Kgとボリュームと食材にこだわりがあるとのことでした。サイドメニューのサラダの野菜も新鮮なものをカットしていきます。今日のデザートはりんごとなります。カレー作りと並行して集会室に隣接したパントリーでは炊飯器でご飯が炊かれていきます。

選び抜いた食材でカレーを作っていきます。

 

サイドメニューのサラダの準備もできました。

 

他方、会場となる集会室ではテーブルのセッティング、飲み物の麦茶の用意、受付の準備、メニュー看板の作成が手分けをして進められます。

食卓にはアクリル板を設置します。

 

受付の準備中で、名簿を確認しています。

 

入口に掲示する今日のメニューは手作りです。

 

また、利用者に提供するお菓子や日用品も選びやすいように飾り付けをします。この日は、府中市のフードバンクから卵20ケース、信徒や修道会からお菓子やおむつ、衛生用品等が寄付されていました。聖堂の入り口には「LA MENSA DEGLI ANGELI」の開催を告げる看板が出されています。

今日提供するお菓子や卵が選びやすいように並べられます。

 

準備が整うと看板が設置されます。

 

食堂の開催準備がある程度整ったところで、スタッフが全員集まって子ども食堂を始めるお祈りとミーティングが行われます。おかわりは自由だけれども食べ残しの無いようにサーブするということが確認されます。

開始前にみんなでお祈りをします。

 

11時半に子供食堂がオープンすると、子供連れのご家族や中学生など様々な利用者の方が来訪し始めます。事前登録制ではありませんが、既利用者の方には登録カードが渡されており、受付でそれを提示してもらいます。また、初めての利用者の場合名前を確認して、次回に登録カードをお渡しするようになります。利用者が席に案内されると、サーブする係のスタッフがカレーとサラダを運んできます。

パントリーで盛り付けをして食堂に運びます。

 

お替りしたくなる具沢山のカレーとサラダ、デザートのりんごが付きます。

 

テーブルでは親子で楽しそうにカレーを食べる光景が見られます。また、一人でこられて黙々と食べて行かれる方もいて、様々な方が利用されているのがわかります。

親子で楽しそうに食事をしています。

 

カレーを食べ終わるとデザートのリンゴがサーブされます。子供達は、この頃になると、横に飾ってあるお菓子に目が行って親に選んでいいか聞いています。食事が終わると、家族ごとに卵や必要な日用品をスタッフから受け取り皆さんは「ありがとう」「おいしかった」とお礼の声掛けをしてお帰りになります。午後1時半の終了時間までの間、隙間なく利用者の方が訪れ、2時間で1テーブル当たり4回ほど、利用者の方が交代していました。

食事の後、子供たちのお楽しみのお菓子タイムです。

 

利用者の方が全員お帰りになると、スタッフ全員で反省会を行い、その中で受付係から今日の利用者の数が大人20名子供21名の41名であったと、さらに利用者の方の状況などが報告されました。ミーティングが終わると、各自担当するところの後片付けを行い今日の活動は終了となりました。

全員が集まって反省会を行います。

 

食事中に、シングルマザーで子供が小さい時から学習支援と子供食堂を利用している二人に話を伺うこと出来ました。その中で「ここには土曜日に学習支援に来るようになったのがはじまりです。昼間働いているので、親子でなかなか人とかかわる時間が取れないでいました。この食堂を通してバランスの良い食事ができるだけでなく、私も子供もスタッフの方や利用者の方とつながりができて感謝しています。」というお話しや、「親子二人だけの家族なので、ここに来ると私も相談できる人ができるし、子供にもスタッフの方が優しい大人として話しかけてくれることはすごくありがたいと思っている。」というお話を伺えました。

代表の佐藤さんと筒井さんにお話を伺いました。
「府中教会でカリタス府中と子供食堂を始めた経緯はどうだったのでしょうか。」

カリタス府中はベネディクト16世の「神は愛」の呼びかけに応えて、小教区のカリタスとして2015年に発足し、学習支援等の活動を行ってきました。2017年にアンドレア神父様(現補佐司教)が主任司祭に着任し新たな活動の機運がでて、信徒有志が中心となって子供食堂ができないかと高円寺教会に視察に行ったり、行政に相談したりして事前調査を行いました。その結果、2018年11月に子供食堂をカリタス府中の活動として始めることになりました。コロナ禍では3カ月は中断をしましたが、換気が行き届く聖堂に机を並べて、厨房が使えないので、食事をお弁当に切り替えて食堂を早期に再開し、その後厨房での調理も再開し現在に至っています。コロナ前は月一回でしたが、コロナ禍を経て現在は月二回となっています。

「行政との繋がりがあるとのことですが。」

 子供食堂の運営自体は信徒を始め様々な方の寄付等で成り立っており、行政からの金銭的な援助は受けていません。しかし、府中市の子供食堂のネットワークには加入しており、市による情報発信やフードバンクの情報提供などは受けています。カリタス府中は学習支援や子供食堂を通じて地域との繋がりを大切にしており、社会福祉協議会との関係を持っています。

「こども食堂をやっている中で苦労していることは何ですか。」

こども食堂で食事を提供することに特に苦労というものは感じませんが、食べ物を大切にするという食育や、フードロスを無くすという意味でも、食べ残しだけばゼロにしたいという思いで、利用者の皆さんやスタッフの方にもしつこいくらい話しかけるようにしています。

 

カリタス東京活動報告

部落人権問題勉強会開催

2月26日、2月の東京教区司祭月例集会にて、部落人権問題に関する勉強会を開催しました。講師は、日本キリスト教協議会(NCC)部落差別問題委員会委員の水野松男さんです。部落差別の歴史的背景について「約150年前から続く部落差別には、皮革職人への偏見があった。甲冑や太鼓の素材としての皮革、皮革を煮出して作る膠(にかわ)やロウソクの材料となる油脂など、生活や文化の素材の重要な作り手だった皮革職人。屠畜解体の様子やタンパク質の臭気などから嫌われ差別されてきた。『温泉で硫黄の匂いを嫌う人は少ないのに、皮革加工で出る同じような匂いは差別の要因だったんですね』」と話されました。また、現代でも就職の際などに存在する差別などについて学びました。

 

 

カリタスインターナショナルTogether Weキャンペーンのミサおよび写真展の開催

2月11日(日曜日)にカリタスインターナショナルのTogether Weキャンペーンの意向を受けた「Together Weミサ」が「世界病者の日ミサ」と共に捧げられました。Together Weミサに合わせて東京カテドラル関口会館のエントランスホールで「Together We写真展」が開催され、国内外のケアの共同体を促進する活動が写真を通じて紹介されました。

 

カリタスジャパン教区担当者会議における能登半島地震の報告

3月6日にカリタスジャパンの教区担当者会議が開催されました。その中で名古屋教区の教区担当者である山野神父様より、名古屋教区では金沢教会に開設された「カリタスのとサポートセンター」を中心として、羽咋のボランティアベースを足掛かりに七尾での「じんのび食堂」や水支援の活動を行っていること、また、七尾のボランティアベースを準備中であることが報告されました。
(なお、最新の活動の現況やボランティアの受け入れに関しては「カリタスのとサポートセンター」の公式ブログに掲載されていますので、「のとせんブログ」で検索してご確認下さい。)